DPC制度を知っていますか?
(朝日新聞 2010年10月5日)(長尾和宏先生)
「最近の病院はすぐに放り出されるわ」とボヤく人がいます。
そうです。
DPC制度の急性期病院が増えています。
DPCとは、包括制医療のこと。
マルメとも言います。
簡単に言えば、パック料金のようなものです。
病名に対応して、最初から定められた医療費が支払われます。
入院した時点で、退院までのスケジュールが定められています。
料理で言えば、これまでは、その都度注文していたものが、店に入った時点
から、「お任せコース」に乗せられます。
包括制ですから、検査や治療をしてもしなくても同じ報酬です。
ならば検査も治療も最小限に抑えた方が、経営的には有利です。
無駄な医療費を削減するために、採用されている制度です。
パック旅行だと、寄り道が許されません。
同様に、DPC制度だと、余計なことはなるべくしません。
そのほうが病院の利益になります。
抗がん剤治療を、外来で行う病院が増えてきました。
おそらくDPC病院でしょう。
高額な抗がん剤は、マルメ医療にはなじみにくいのです。
入院が嫌いな患者さんには喜ばれますが、反対の人もいます。
「外来抗がん剤治療プラス在宅緩和ケア」といった患者さんが、再発大腸がん
などで増えてきています。
DPC制度は患者さんにとっては、不利益になることもあります。
してあげたいけど、すると「持ち出し」になり、経営陣から叱られる。
理想と現実の狭間で、内心苦脳している現場の勤務医もいます。
臓器別病名に縛られたDPC制度は、まだまだ改善の余地があります。
ある程度のマルメは仕方がないでしょうが、行きすぎると、本末転倒の医療に
なってしまいます。
「マルメ」の反対とは、「出来高」です。
診療所の外来は、ほとんどが出来高制です。
在宅医療も、一部を除いて、ほぼ出来高制です。
同じ地域に、マルメの医療機関と出来高の医療機関があると、さまざまな
摩擦が起きる可能性があります。
しかし、マルメ医療と出来高医療が混在しているのが現状です。
マルメ医療の是非は、大変難しい命題です。
しかし現在、多くの急性期病院が、DPCという制度で運用されていることは
知ってくおいてださい。
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