[エベレストで解明された2型糖尿病発症の鍵
――低酸素状態がインスリン抵抗性亢進の誘因に]
(HealthDay News 2014年4月14日)
エベレストへの登山者を対象に行われた研究で、2型糖尿病発症の生物学的
引き金となる新たな知見が得られた。
英サウサンプトン大学麻酔学・臨床教授でサウサンプトン英国立衛生研究所
呼吸器生物医学研究ユニット内臨床研究分野部長のMike Grocott氏らが
「PLOS One」4月14日号に報告した論文で、持続的な低酸素状態は
インスリン抵抗性の亢進に関連していたという。
極高地における低酸素とヒトの活動能力を調べる研究プログラムの一環で、
糖尿病リスク因子であるインスリン抵抗性と低酸素状態の関連を検討した。
高地環境におかれた健常人ボランティアでは、海面レベルの肥満者にしか
見られない状態を観察することができるからだ。
その結果、登山者が高地での低酸素環境に持続的に曝露した6~8週間に、
インスリン抵抗性の複数指標が上昇したことがわかった。
インスリン抵抗性を示す指標の変化は、血中の炎症マーカーや酸化ストレスの
上昇に関連していた。
Grocott 氏は同大ニュースリリースで、「インスリン抵抗性の臨床問題に
有用な見識をもたらす結果だ。肥満者は、微小血管が十分量の酸素を脂肪
細胞に供給できないため、慢性的に軽度の低酸素状態にある。われわれの
検討結果からは、酸化ストレスあるいは炎症レベルの低下によって糖尿病への
進行を遅延させられる可能性が示唆された」と述べている。
2007年に行われた調査では、24人の健常ボランティアがエベレストに登り、
海抜5,300メートルにあるベースキャンプで血糖、体重、炎症の状態などを
測定した。
その後ボランティアの半数はベースキャンプに残り、残り半数は最高海抜
8,848メートルの山頂に到達した。
測定はベースキャンプ群と登頂群でそれぞれ、トレックの6週目および
8週目に実施した。
共同研究者であり、英ロンドン大学外科学およびインターベンショナル・
サイエンス上級講師・客員顧問のDaniel Martin氏はこの結果について、
「糖尿病患者でインスリン抵抗性が亢進する機序についてユニークな見識を
示した」と解説。
さらに極高地で行われた調査研究の意義について、「組織の低酸素状態と
いった探索が困難な仮説の実証に、こうした高地実験モデルは素晴らしい
方法だろう」と述べている。
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