亜鉛不足で低身長や味覚障害、中高年男性の更年期障害も | アクティブエイジング アンチエイジング

[亜鉛不足で起こる症状…低身長や味覚障害など]

(読売新聞  2017年12月21日)


埼玉県の小学5年男児(10)は身長の伸びが遅かった。
小学校入学前に成長ホルモン分泌が不十分な低身長症と診断され、1年から
成長ホルモンの注射を開始したが十分効果がなかった。
半年後に血液検査で亜鉛不足と分かり、亜鉛を補充する薬を飲み始めたところ
伸び始め、今は標準身長にほぼ追いついた。
父親(49)は「亜鉛が成長に関係しているとは知らなかった。適切な治療を
受けられて良かった」と喜ぶ。


亜鉛は体に欠かせないミネラルだ。
不足すると味覚障害や食欲不振、皮膚炎、口内炎、脱毛、傷が治りにくいなど
様々な影響が出る。
赤ちゃんのおむつかぶれや子どもの低身長の原因となっている場合もある。

また、消化や吸収などに関与する酵素を作ったり、働きを強めたりする。
造血、生殖、免疫などの機能維持にもかかわっている。



<体内では生成不能、サプリメントも市販されているが…>
体内で作り出すことができないため、食事で摂取するしかない。

厚生労働省が定める日本人が摂取すべき亜鉛の1日当たり推奨量は、成人
男性で10ミリ・グラム、同女性で8ミリ・グラム。
だが厚労省の調査では、平均摂取量はそれぞれ9ミリ・グラム前後、7ミリ・
グラム前後にとどまる。

小児科医で帝京平成大学(東京・池袋)教授の児玉浩子さん(71)は「亜鉛を
十分に摂取できていない人は多いのではないか」と指摘する。

亜鉛が多く含まれる代表的な食品は 牡蠣で、1食分となる60グラム
(5粒)に7.9ミリ・グラム。
豚レバー70グラムで4.8ミリ・グラム、牛肩肉70グラムで4ミリ・グラム、
木綿豆腐150グラムで0.9ミリ・グラムなどとなっている。
バランスよく食べて推奨量を確保する必要がある。


肝臓や腸に病気があると亜鉛を吸収しにくくなるほか、スポーツや妊娠などで
必要量や排出量が増えて不足することもある。

手足が震えるなどの症状が出るパーキンソン病の代表的な治療薬「レボドパ」
や、手足の関節がこわばる関節リウマチの一部治療薬などには、亜鉛を体外に
排出する働きがある。


亜鉛を補充できるサプリメントも市販されているが、どの程度の量を取るかは
自己判断になるうえ、摂取しすぎる危険もある。



<中高年男性の更年期障害にも、亜鉛を処方>
今春、亜鉛不足で様々な体調不良をきたす「低亜鉛血症」に対し、国内で初の
亜鉛製剤「ノベルジン」(商品名)が発売された。
体に銅が蓄積して肝臓や脳などに障害が出る難病ウィルソン病の治療薬として
発売されていたが、低亜鉛血症に効果があることが確認され、効能が追加
された。

マイシティクリニック(東京・新宿)院長の平澤精一さん(62)は、やる気が
起きない、記憶力低下、性機能障害など中高年男性の更年期障害に対し、
男性ホルモン補充療法に加え、この亜鉛製剤を処方することが多い。
平澤さんは「更年期男性の多くは亜鉛も不足している。亜鉛が十分になれば
見た目も若々しくなる」と話す。

児玉さんが理事を務める日本臨床栄養学会では、血液中の亜鉛の値が著しく
低く、味覚障害など様々な症状がある場合を「亜鉛欠乏症」と定義し、
診断基準の作成を進めている。
児玉さんは「医師の間でも亜鉛不足は十分知られていない。明確な診断基準が
必要だ」と話す。




(石塚人生)




https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20171218-OYTET50053/