[エラの張った顔は要注意 「歯ぎしり」は全身を壊す危険な悪癖]
(日刊ゲンダイ 2014年9月11日)
「また歯ぎしりしてたわよ!」――。
睡眠中の歯ぎしりを妻に指摘されたことのある人も多いはず。
たかが歯ぎしりと放置し続けると、歯だけでなく内臓までボロボロになりかね
ない。
歯ぎしりは歯だけでなく、全身を破壊する恐れのある危険な悪癖だという。
歯科医療研究センター「林歯科」の林晋哉院長に、歯ぎしりの危険性を
聞いた。
明け方、体が目覚めようとする時、誰もが「歯ぎしり」や音の出ない
「噛みしめ」をしている。
口は脳へつながる神経の数が最も多い場所だ。
歯を噛みしめることで、寝ている時に副交感神経が優位になっている脳に
対し、目覚めさせる信号を送っているのだ。
しかし、歯の噛み合わせが悪いと、脳にうまく信号を送れない。
そのため、必要以上の「噛みしめ」や「歯ぎしり」をしてしまう。
その負担は想像以上に大きい。
朝、起きた時に「顎がだるい」「疲れている」といった感覚を覚える人は
要注意だ。
これを長期にわたって繰り返せば、いずれ歯の表面や内部が欠けてしまう
「物を乱暴に扱えば壊れるように、歯も使い過ぎれば壊れます。歯が欠けた
隙間には細菌が入り込んで虫歯になったり、歯肉に負担がかかることで
歯周病も進行しやすくなります。顔にある4カ所の咀嚼筋は常に凝った状態に
なり、それに連なる表情筋が硬くなって、険のあるトゲトゲしい印象になる
人もいます」
いわゆる「エラの張った顔」は骨格によるものと思われがちだが、実は
歯ぎしりや噛みしめによって咀嚼筋が発達し、厚くなってしまったものだと
いう。
<ある程度は自分で緩和できる>
歯ぎしりの被害は口の周辺だけではない。
「筋肉は筋膜によってつながっています。咀嚼筋が疲労してくれば、首や肩の
筋肉にも悪影響を及ぼし、頭痛や肩こりを引き起こします。また、平衡感覚を
はじめいろいろな脳神経を必要以上に刺激してしまうので、めまいやさらには
胸の痛み、呼吸困難などの原因にもなるのです」
もし、歯ぎしりの圧力によって右の歯が壊れた場合、バランスを取ろうとして
体は左側に傾き、背骨が曲がってしまう。
すると傾いている方の内臓や血管、神経が圧迫され、さまざまな病気に
つながっていく。
歯ぎしりを甘く見ていると、いずれ全身まで破壊される。
気付いたら一刻も早く解消したい。
林医師によれば、歯ぎしりはある程度まで自分で緩和できるという。
「人はリラックスしていると、上の歯と下の歯の間に2~3ミリの『安静
空隙』という隙間が空いています。歯ぎしりが強い人は日中も歯を噛みしめて
いることが多いので、普段から『咀嚼筋マッサージ』や『割り箸法』を実践
して、いつでも無意識に安静空隙を保てるよう身につけてください。何度も
繰り返し、脳に安静空隙を覚えさせることがポイントです」
咀嚼筋マッサージは、人さし指で頬のやや後ろ側にある咀嚼筋や、こめかみに
ある側頭筋をゆっくりマッサージするだけ。
会議中や電車の中など、気付いたときに何度も実践しよう。
割り箸法は、あおむけに寝て口を軽く開け、割り箸を唇の間にのせて全身を
10~30分程度リラックスさせればOKだ。
「しかし、長年にわたる悪癖は脳が覚えてしまったものなので、そう簡単には
直りません。すでに肩こり、頭痛、虫歯、歯周病などの実被害がある人は、
まず医師の診断を受けた方がいいでしょう」
歯の疾患によって歯が抜け始める平均年齢は51歳。
そこから年々1本、2本と減っていくが、負担が大きい歯ぎしりを改善して
歯を大切に使えば、70歳、80歳になっても自分の歯をより多く残すことが
できる。
今からでも遅くはない。
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/153248