[皮膚病の乾癬と心臓病の大動脈弁狭窄の意外な関係]
(MEDLEY 2015年6月15日)
<500万人のオランダ人のデータから>
乾癬は、皮膚に慢性的に起きる炎症によって赤い発疹ができる病気ですが、
皮膚だけではなく体の様々な部位にも炎症を起こすことで、動脈硬化などの
全身病を引き起こすことも広く知られています。
今回の研究では、乾癬と大動脈弁狭窄という一見全く異なる種類の病気に
実は関連がある、という結果が出ています。
<大動脈弁狭窄とは>
人の心臓には血液の逆流を防ぐための4つの弁がついています。
その中でも心臓と大動脈をつなぐ、大動脈への出口に当たる部分が大動脈弁
です。
大動脈弁狭窄とは、本来スムーズに血液が通過できる大動脈への出口が、
何らかの理由で狭くなってしまう病態です。
出口が狭くなると、そこを通過するのに余計な負荷が心臓にかかってしまい、
心不全や失神といった症状を呈します。
大動脈が狭くなる原因として、1つは弁の慢性的な炎症というものが挙げ
られます。
著者らは、乾癬が全身に炎症を起こすのであれば、弁に炎症を起こしても
何ら不思議ではない、という観点の下、研究をしています。
<18歳以上のオランダ人500万人を解析>
筆者らは1997年1月から2011年12月31日までに取得された、18歳以上の
オランダ人5,107,624人のデータを解析して、乾癬と大動脈弁狭窄の関連を
調べました。
その他の合併症や、内服薬、社会的経済的背景などの様々な因子を詳細に
集計しています。
<乾癬の重症度に応じて、大動脈弁狭窄の頻度が増えた>
結果は以下のとおりでした。
観察期間中、58,747人の軽度の乾癬、11,918人の重度の乾癬が見られた。
大動脈弁狭窄の発生頻度は、8.09/1万人年(対照群、48,539人、平均観察
期間12.3年)16.07/1万人年(軽度乾癬、509人、平均観察期間6.2年)、
20.08/1万人年(重度乾癬、99人、平均観察期間 5.4年)であった。
以上のように、乾癬がある人、特に重症の乾癬がある人では、大動脈弁狭窄の
発生頻度が上昇していることがデータから導かれました。
皮膚の病気と全身の病気の関連がある例というのは他にも様々なものが
ありますが、今回の研究の特筆すべき点は、解析したデータ量の膨大さ
(500万人)と「慢性的な炎症」という共通項から乾癬と大動脈弁狭窄を
結びつけた点だと思います。
これらの疾患の背後にあるメカニズムが解明される日が待ち遠しいですね。
なお、MEDLEYニュースでは乾癬についてほかの研究も紹介しています。
興味のある方はあわせてご覧ください。
「糖尿病に乾癬が合併すると血管病変のリスクが上がる」
(石田 渉)
https://medley.life/news/item/557aa9df7c6821fd00d532cc