[侮れないドライマウス 唾液減少、感染症のリスク増]
(産経新聞 2015年1月13日)
唾液が減って口の中が乾燥し、痛みや口臭などの原因になるドライマウス
(口腔乾燥症)。
命に関わる症状ではないからと軽視されがちだが、重症化すると感染症に
かかりやすくなる恐れもあり、侮るのは禁物だ。
国内で歯科医師を中心とするドライマウス研究会が活動を始めて10年余り。
患者を支える動きも少しずつ広がってきた。
<中高年女性>
横浜市にある鶴見大歯学部病院は国内初のドライマウス専門外来を平成14年に
開設した。
その中心となった斎藤一郎教授は「認知度は高まってきたが、患者が体験する
つらさに比べると医療関係者の理解は不十分」と話す。
開設から昨年11月末までの受診者は約5800人。
患者が増えている実感があるという。
斎藤さんによると、ドライマウスは中高年女性に多く、原因はストレスや
老化などさまざまだ。
例えばストレス。
唾液腺は自律神経の支配を受けていて、緊張すると唾液が出にくくなる。
ストレスで緊張が続く人は要注意ということになる。
意外に多いとみられるのが薬の副作用。
唾液の分泌を減らす副作用がある薬は珍しくない。
もう1つの大きな原因は「シェーグレン症候群」という自己免疫疾患。
免疫細胞が自分の唾液腺を「異物」として攻撃し、唾液が出にくくなる。
鶴見大では患者の約1割がこの病気だった。
だが原因は1つとは限らず、幾つもの要因が複合していることも多い。
<生活見直しで改善>
唾液が減るとどんな不都合があるのか。
乾いた食品がのみ込みにくいほか、舌や口内粘膜がこすれて傷つき、痛む。
また口の中に普段からいたり、外から入ってきたりする細菌などが洗い
流されずに残るため、虫歯や歯周病が増える、感染症にかかりやすくなると
いった問題もある。
口の乾きが3カ月以上続いたら、大きな病院などにある口腔外科を訪ねて
ほしいと斎藤さんは勧める。
斎藤さんが平成14年から代表を務めるドライマウス研究会のホームページ
には、研究会が定期的に開くドライマウスに関する講習会を受けた歯科医師ら
医療従事者の都道府県別リストが掲載されている。
老化が原因の場合は、かむ筋力の低下で唾液が減っていることが多い。
口の体操や唾液腺のマッサージに加え、毎日の食事をよくかむという基本的な
生活の見直しで改善が期待できる。
シュガーレスガムも勧められる。
研究会は患者からの要望を受け、平成22年から「ドライマウスカード」を
作製している。
美術館など飲食禁止の場所で水やガムが欠かせない重症の患者が、周囲に
理解を求めるためのカードだ。
研究会に申し込むと無償で送ってくれる。
これまでに約300枚を配布した。
<支え合い>
埼玉県久喜市の50代の新藤朝子さんは30代半ばでシェーグレン症候群に
なり、一昨年からドライマウスがひどくなった。
舌の先がひび割れて痛み、塩辛いものを食べるとショックで体が固まるほどの
苦痛がある。
口を潤すペットボトルのお茶は手放せない。
唾液を出すためガムが大量に必要で、ガム代を計算してみたら年に5万円近く
かかっていたという。
新藤さんはシェーグレン症候群やドライマウスに悩む人たちの自助グループ
「すずらん」を運営し、東京で定期的に交流会を開いている。
新藤さんは「症状のつらさに加え、人に理解してもらえない苦しさで患者は
精神的な危機にある。情報交換して互いに支え合いたい」と話す。
問い合わせはすずらんのホームページから。
http://www.sankei.com/life/news/150113/lif1501130012-n1.html