[テノール歌手 秋川雅史さん
扁桃の肥大(3)救いの診断 手術経て再出発]
(読売新聞 2014年11月27日)
最初の異変から2年たった1998年、救いの耳鼻咽喉科医が現れた。
「扁桃は口の中に見えるもの以外にもある。
舌の付け根の扁桃の肥大が、高い声の障害の原因」と診断してくれた。
病名は「舌根扁桃肥大」。
大学病院で、肥大部の摘出手術を受けた。
この部分には太い血管が通っているので、危険な手術だった。
「血管を切ったら、大量出血になり……と、先生に脅されました。
でも、もう一度歌うために、手術をしないわけには、いきませんでした」
肥大部の切除が足りなかったのか、歌声はあまり回復しなかった。
半年後、別の病院で再手術を受けた。
「今度はだいぶ切ってくれたようで、とても痛かった」
手術から3週間後、歌ってみた。
心配した音域が、元通りきれいに出た。雑音も消えていた。
「歌えるのは当たり前と思っていた。ようやく歌声を取り戻し、歌える感謝の
気持ちを一生忘れてはいけないと思いました」
30歳での再出発。
カンツォーネコンクール、日本クラシック音楽コンクール声楽部門で、
相次いで最高位に輝いた。
3年後、テノール歌手としてCDデビューし、本格的なプロ活動に入った。
リサイタルなどで募った、歌ってほしい曲のリクエストに、新しい曲名が
あった。
「千の風になって」との出会いだった。
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=108803