[小球性貧血・・・赤血球が小さくなる?]
(家庭の医学 2017年8月4日)
<氷をかじるのは貧血のサイン!?>
貧血は女性に多く見られる症状のひとつですが、貧血にもさまざまなタイプが
あります。
赤血球の大きさが標準より小さくなってしまうタイプの「小球性貧血」は、
おもに鉄分不足で引き起こされます。
赤血球の大きさは、MCV(平均赤血球容積)で表されます。
基準値は80~98。
「小球性貧血」、または「小球性低色素性貧血」と呼ばれるものは、MCVの
数値が80を下回り、赤血球が小さく、含まれるヘモグロビンの濃度が減少して
いるために起きる貧血です。
この中で、最も多いのが鉄欠乏性貧血です。
そのほかとしては、骨髄異形成症候群の一亜型である鉄芽球性貧血、地中海性
貧血、悪性腫瘍など慢性炎症状態による貧血などが挙げられます。
ヘモグロビンは酸素を全身に運び、二酸化炭素を回収する働きを担って
います。
何らかの原因でMCVが小さいと、ヘモグロビンが少なくなり、この働きが
滞るために貧血症状を引き起こします。
症状としては、主に動悸、息切れ、疲労感、倦怠感などで、頭痛および唇・
肌の乾燥、爪が割れやすい、髪の毛が抜けやすいといったことが起こることが
あります。
しかし自覚症状がまったく無いまま、検査で貧血がみつかるケースも珍しく
ありません。
息切れなど目立った自覚症状がない場合でも、貧血は心臓などに負担を
かけて、思わぬ病気の引き金になることもあるため、注意が必要です。
原因の多くは、鉄分不足の「鉄欠乏性貧血」です。
とくに女性の場合は月経があり、定期的に血液が失われるため、日頃から
鉄分不足になりがちな傾向にあります。
また、妊娠中も多くの鉄分を必要とします。
しかし、あまりにも著明な鉄欠乏性貧血があった場合は、子宮筋腫などが
原因で月経量が多くなる場合があるので、その時は産婦人科を受診して検査を
受けることも必要です。
閉経後の女性や男性でも、胃や十二指腸潰瘍の潰瘍やがん、痔、ヘリコ
バクター・ピロリ感染症といった消化管系疾患があると、鉄分の吸収が阻害
されるため、鉄分不足に陥ることがあります。
激しいスポーツも貧血を招くことがあります。
結核などの慢性呼吸器感染症、関節リウマチなどの膠原病などの疾患がある
場合も、体内で鉄分が有効に活用されないために貧血を招きます。
ほかにも、遺伝的や薬物の使用などで、鉄分をうまく取り込めない鉄芽球性
貧血が原因の場合もあります。
鉄分を積極的に摂取しているのにもかかわらず、貧血症状が続く場合は、
念のため一度検査を受けるといいでしょう。
鉄欠乏性貧血の特徴的なサインのひとつとして、しばしば「氷食」があり
ます。
理由は不明ですが、「氷をガリガリとかじりたくなる」という行為は、鉄分が
欠乏していると起こりやすいといわれます。
氷をかじることが毎日のように癖になっている場合は、貧血がないか一度
チェックするといいかもしれません。
貧血の治療は、まずは鉄剤を内服し、重度の場合には注射や点滴で鉄分を補い
ます。
内服薬では、吐き気や腹痛、便秘などが起こる人もいるので、その場合は
医師に相談してください。
食生活では、動物性の肉や魚に含まれる「ヘム鉄」と、緑黄色野菜や貝類、
海藻などに含まれる「非ヘム鉄」の両方をバランスよく食べるよう心がけ
ましょう。
1日に必要な鉄の摂取量は、男性10mg、女性は12mgです。
食品100gあたり、豚レバーで約13mg、ハマグリ約38mg、ひじき55mgの
鉄分が含まれます。
しかし、一度にひじき100gをとることはありませんので、鉄分を含む
さまざまな食品から少しずつバランスよく摂取しましょう。
多く含むものは、レバー類、赤身の魚、切り干し大根、高野豆腐、干しエビ、
シジミ、アサリ、きなこ、小松菜など。
貧血の陰には、思わぬ病気が潜んでいることもあるので、軽視せず、気になる
症状があったり、検査で指摘を受けた場合は、すみやかに医療機関を受診し、
治療していきましょう。
(監修:虎の門病院 内分泌代謝科医長 宮川めぐみ)
http://sp.kateinoigaku.ne.jp/kiji/124597/