メチル水銀:マグロ過食に注意 妊婦から胎児へ影響 | アクティブエイジング アンチエイジング

[<メチル水銀>マグロ過食に注意 妊婦から胎児へ影響]

(毎日新聞  2016年11月28日)


マグロやメカジキなどメチル水銀を比較的多く含む魚介類を妊婦が食べ過ぎる
と、生まれた子の運動機能や知能の発達に悪影響が出るリスクが増すことが、
東北大チームの疫学調査で分かった。
メチル水銀は水俣病の原因物質だが、一般的な食用に問題のない低濃度の汚染
でも胎児の発達に影響する可能性があることが明らかになるのは、日本人
対象の調査では初めて。


2002年から、魚をよく食べていると考えられる東北地方沿岸の母子約800組を
継続的に調査。
母親の出産時の毛髪に含まれるメチル水銀濃度を測定し、子に対しては
1歳半と3歳半の時点で国際的によく用いられる検査で運動機能や知能の
発達を調べ、両者の関係を分析した。

毛髪のメチル水銀濃度は低い人が1ppm以下だったのに対し、高い人は
10ppmを超えていた。
世界保健機関などは、水俣病のような神経障害を引き起こす下限値を50ppmと
している。

濃度が最高レベルの人たちの子は最低レベルに比べ、1歳半時点で実施した
「ベイリー検査」という運動機能の発達の指標の点数が約5%低かった。
乳幼児期の運動機能は将来の知能発達と関連があるとされる。

3歳半時点の知能指数検査では男児のみ約10%の差があった。
海外の研究で、男児の方が影響を受けやすいことが知られている。


国は2005年、海外の研究を基に、妊婦に対しメチル水銀の1週間当たりの
摂取許容量を体重1キロ当たり100万分の2グラムと決めた。
厚生労働省はこれに基づき、クロマグロの摂取は週80グラム未満とするなどの
目安を示している。

今回の調査では食生活も尋ねており、約2割がこれを超えていたと考えられる
という。


研究チームの仲井邦彦・東北大教授(発達環境医学)は「目安を守れば、
影響は心配しなくてよいと考えられる。魚には貴重な栄養も含まれており、
妊婦が魚を断つことは好ましくない。食物連鎖の上位にいるマグロなどを
避けサンマなどを食べるなど、魚種を選ぶことが大切だ」と話す。



<個人、環境要因で差>
東北大チームの研究で比較的低濃度のメチル水銀でも妊婦が摂取した場合、
胎児の発達に影響するリスクがあることが明らかになったが、影響の受け
やすさには個人差があり、多く摂取した母親の子が必ずしも大きな影響を
受けるとは限らない。
今回の研究結果は、個人レベルではなく、集団として将来知的障害と判断
される子の割合が増えることを意味する。

例えば1000人の集団の場合、メチル水銀の影響がなくても、知的障害と判断
される子が23人程度生まれることが経験的に分かっている。
メチル水銀を多く摂取した結果、ベイリー検査の点数が約5%下がることは、
これが約2倍の48人程度になるリスクが生じることに相当するという。

子どもの発達には遺伝や教育など、さまざまな環境要因も大きく影響する。
また、低濃度のメチル水銀と子の脳の発達の関係は未解明のことが多い。
個々の子に知的障害が疑われる場合、メチル水銀が影響したかどうかは判別
できないのが現状だ。
(渡辺諒)



【ことば】メチル水銀
水銀は地殻や土壌に含まれ、火山噴火や石炭の燃焼、金の採掘などに伴って
排出される。
これが水中や土壌中で微生物の働きなどによって化学変化し、メチル水銀が
生成される。
海水にも含まれ、食物連鎖によって徐々に濃縮し、上位に位置するクロマグロ
などで濃度が高くなる。

水俣病は、工場排水中の高濃度のメチル水銀が原因となった。






http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161128-00000001-mai-sctch