うつ病患者の4人に1人、症状自覚から医療機関受診まで1年以上 | アクティブエイジング アンチエイジング

[うつ病患者の4人に1人、症状自覚から医療機関受診まで「1年以上」]

(QLife 2017年03月03日)


<患者の59.8%「自分がうつ病になる可能性があるとは思っていなかった」>
一生のうちに発病した割合を示す生涯有病率が6.5%と推計されている
うつ病。
世界保健機関(WHO)が先日発表した報告書によると、全世界のうつ病
患者数は3億2,200万人と推計されています。

日本イーライリリー株式会社はこのほど、過去にうつ病と診断され、現在は
社会生活に復帰しているか、復帰に向けて準備をしている20~60代の男女
517名を対象に、うつ病に関するインターネット患者調査を実施。
2月27日に結果を公表しました。

その結果、患者の約6割が、うつ病と診断される前は自分がうつ病になる
可能性があるとは「思っていなかった」と回答。
さらに4人に1人は、最初にうつ病の症状を自覚してから、医療機関を受診
するまでに「1年以上」かかっていました。
その理由として「自分の頑張りや気持ちの持ちようで不調を解決できると
思った」(45.9%)、「性格の問題で病気ではないと思った」(35.4%)が
挙がりました。


うつ病の症状は多様で、抑うつ気分や不安、あせりといった精神症状だけで
なく、眠れない、食べられない、疲れやすい、だるいといった身体症状を
伴います。
また、頭痛や頭が重い感じ、めまい、口が渇く、息苦しい、ドキドキする、
腹痛、便秘や下痢、吐き気、性欲減退、耳鳴り、発汗、背中や胸の痛み、
関節痛、発疹なども、うつ病の症状であることも。

しかしこうした身体症状を、うつ病と自覚しない患者は多くいます。
調査からも、「気分の落ち込み・眠れない・食べられない」という症状は7割
以上が認識していましたが、「だるい、重い、さまざまなところが痛い」と
いう症状については5割程度しか認識しておらず、患者は自分の症状が病気で
あると思わずに、つらさをがまんしているという実態が伺えます。

 

<患者に必要なことを周囲が理解して、自然に行動に移して>
同日に開催された会見で講演した、日本うつ病センター理事長で国立精神・
神経医療研究センター名誉理事長の樋口輝彦先生によると、うつ病の身体
症状は、精神・神経科よりもかかりつけ医で相談されることが多く、うつ病の
専門家である精神・神経科の医師には伝えられないこともあるといいます。
「いきなり精神科を受診することに抵抗があるのなら、内科で相談するのも
一案です。ただし、検査で異常がなければ“問題なし”“疲れでしょう”と
いわれてしまう可能性もありますので、そういう場合は心療内科を受診して
ください」(樋口先生)


今回の調査では、うつ病に対する周囲の理解についても調べています。
うつ病と診断されたことを周囲に伝えたかを尋ねたところ、約9割が
「配偶者」に伝えたと回答。
次いで、「自分の親」(69.5%)、「友人」(58.3%)、「職場の人」
(57.5%)と続きます。
伝えた相手からうつ病に対する理解を得られたかを質問したところ、
「配偶者」と「友人」からは8割以上が理解を得られたものの、「職場の人」
から理解を得られたのは57.5%でした。
なお、周囲に伝えた人の約8割は、周囲の理解が回復に役立ったと回答して
います。

「配偶者」「友人」「職場の人」のいずれも、「うつ病になる前と変わらず、
ふだんどおりに接してくれた」ことが回復に役立ったようです。

樋口先生によると、「やってはいけないのは、積極的・感傷的・支配的な対応
です。反対に好ましいのは、共感し、受け入れること。感情のこもった
コミュニケーションをとり、患者さんができなくなっていることは、必要に
応じてサポートしてあげることも必要」なのだとか。


さらに、会見では、うつ病を経験した黒川常治さんと、障害者就職サポート
センタービルドでうつ病患者の社会復帰の支援を行ってる梅田典子さんも
登壇。
うつ病患者に対する周囲のかかわり方について、「患者には、できないことを
数え上げるよりも、できることを積み重ねていく、その過程に寄り添って
ほしい」と黒川さん。
梅田さんも、「うつ病患者さんは真面目な方が多いので、できなかったことを
悔みがちです。できたことをみて、長い目で回復を考えましょうといつも
いっています」と、それぞれの経験をふまえて語りました。

 


(QLife編集部)

 


https://www.qlife.jp/square/healthcare/story61517.html