歯周病、心疾患・糖尿病を悪化 | アクティブエイジング アンチエイジング

[歯周病、心疾患・糖尿病を悪化]

(日本経済新聞 2011年9月2日)


秋の味覚が楽しめる季節が近づいてきた。食を堪能する口の中は健康な状態を
保てているだろうか。
特に歯周病は歯を失う原因の第1位で、日本人の7割が患っているとされる
「国民病」だ。

最近は動脈硬化や心筋梗塞、糖尿病を悪化させるといった全身への影響も
分かってきた。
予防策の基本は日々の歯磨きだが、意外に正しくできていない人が多い。


<7割の人に症状>
赤ちゃんからお年寄りまで、日本人の7割が歯周病のなんらかの症状を持つと
される。
高校生でも半数が歯茎に腫れがあるという。
対策がとれないのは、目立った自覚症状がないため。
痛みもなくじわじわとむしばまれていく。

歯に汚れが付くと、そこで歯周病菌などが増える。これがプラークという白い
固まりの正体だ。
菌はプラークを足がかりに、歯と歯茎の間のすき間の「歯周ポケット」へ
入り込む。
空気が嫌いな菌には居心地がよい場所だ。

口にいる菌に対抗して体もさまざまな物質を出すが、その中のタンパク質を
分解する化合物などは歯茎も破壊する。
するとポケットが広がり、菌も奥に逃げ込む。
さらに化合物が出て歯を支える骨まで溶かす。
実は歯周病は菌そのものが起こす症状より、体の防御反応で起きたといえる。
歯がぐらついて慌てて歯医者に駆け込むころには歯周病はかなり進行。
一度失った骨を修復するのは難しい。

ところが、骨が分解され歯が抜け落ちても、菌が口の中にとどまるわけでは
ない。
「上下左右28本すべての歯の歯茎がひどく腫れた状態は、口の中に
手のひら大の腫れ物があるのと同じ」(和泉教授)。
腫れ物の表面の皮膚は薄く、菌にしてみると絶好の侵入口で、体内へ入って
いく。
通常、菌が侵入しても体の防御反応で無菌化できる。
ただ、歯周病は次から次へと絶え間なく侵入してくる。

口の中で歯茎の腫れや骨の分解を引き起こした化合物は、血液に乗って全身を
巡って、糖尿病や動脈硬化など生活習慣病の進行に関わる。

世界各国の疫学調査によると、重症な歯周病によって狭心症や心筋梗塞と
いった心疾患のリスクは2倍、がん発症リスクも2倍になる。
出産を促す作用の化合物もあり、妊娠している女性では早産で低体重児を産む
リスクが5倍高くなるとの報告もある。


歯周病菌の対策は口の中を健康に保つことに尽きる。当たり前のことだが
まずは毎日の歯磨き。
ちゃんと毎食後に磨いていると主張する人の中にも「時間をかけているだけで
プラークが取れていない人も多い」と佐瀬歯科医院(千葉市)の佐瀬聡良
院長は注意する。

 

<定期的に歯科医へ>
ねっとりしたプラークは、歯ブラシが当たりさえすればかき取れる。
反対に、当たらないとどんなに時間をかけても意味がない。
鏡を見ながらプラークが付きやすい歯と歯の間や歯茎との境界に歯ブラシが
当たっているか確認しながら磨く。
つまようじやツメなどで歯を軽くひっかいて白いものが付いたらプラークは
落ちていない。
うまく磨けたかどうかはプラークの染み出し液を使っても確認できる。

「当たる」感覚を知るために1度は医者で歯磨きをしてもらうのも効果的だ。
正しい磨き方なら1日1回、歯磨き粉を使わずに水だけでも十分だ。
食後にノンシュガーのガムをかみ口の中の汚れを洗い流す作用のある唾液の
分泌を促すのもプラーク対策になる。

毎日きちんと歯を磨くのは歯周病予防の大前提。
それでも「自力で汚れを完全に取り切るのは限界がある」と専門家は口を
そろえる。
磨き残したプラークが硬くなった歯石や、深くなった歯周ポケットの奥の
汚れは歯科医院の専門家の助けを借りて定期的に取っていくしかない。
佐瀬歯科医院ではきちんと歯磨きができている人なら半年に1度程度、歯
周病が進行気味の人は、2〜3カ月に1度程度のチェックを進めている。


歯医者通いは苦手な人が多く、本当は治療が必要な人のうち実際に通院して
いる人は20~30%程度とされる。
「どうやって歯医者に行ってもらうか、どう受診率を上げるのかが歯科医の
悩み」(和泉教授)。

歯周病の場合はもっと前の予防から取り組む必要があるため、何も自覚症状が
ない時から定期的に診てもらうのが理想的だ。
歯と全身の健康を考えて、通院の習慣を確立する必要がある。

 

 


(鴻知佳子)

 

 

 


http://www.nikkei.com/life/health/article/g=96958A96889DE1E6E6E7E5E0E6E2E2E3E2EBE0E2E3E3979EE382E2E3;p=9694E0E4E3E0E0E2E2EBE1E3E2E3