体の声を聴く 「ほど良い考え」 腰痛軽く | アクティブエイジング アンチエイジング
[体の声を聴く 「ほど良い考え」 腰痛軽く]

(読売新聞  2013年10月3日)


30年間続く腰痛に悩んでいるBさんに、私は宿題を出しました。
「次回までに、腰痛がひどくなる原因と、軽くなる原因を見つけてきて
ください」


痛みが長期間続く慢性疼痛では、痛み自体がストレスになり、心理面や
社会面にまで影響を及ぼします。

薬を使うこともありますが、治療の原則は次の3点です。
(1)痛みに焦点を当てず、日常生活での行動や考え方の変化に焦点を当てる
(2)「患者自身が自分の主治医」になるセルフコントロールの方向に
      治療を進める
(3)心と体が深く関係する「心身相関」への気づきが起こるよう援助する


(2)のセルフコントロールの基本は、自己観察と自己評価です。
宿題はそれらの実践が狙いで、Bさんの「答え」はこうでした。

「これまで『腰痛には悪い』と体を動かさず、安静を心がけてきましたが、
30分ほど散歩したところ、なんと腰痛は軽くなっていたのです。それ以来、
日課に散歩を取り入れました。ところが散歩を2時間に延長した日から腰痛が
強くなってしまいました。常にやり過ぎてしまうのが私の癖です」

Bさんは完全癖で責任感が強く、仕事も趣味も徹底して行うため心身の過労を
招く「all or nothing(全か無か)」の考え方の持ち主だったのです。
真ん中の「ほど良い考え」ができなかった。

「ほど良い考えが無理のない行動や生き方になり、腰痛が軽快する」
そのことに気づいたBさんは、腰痛という体の声から心の声に耳を傾ける
ようになりました。


医師に頼らず痛みを自分の力でコントロールできることに気づいてから、
生活と人生のど真ん中に居座っていた腰痛も軽快し始め、腰痛にとらわれない
生活を過ごせるようになっていたのです。




(清仁会洛西ニュータウン病院名誉院長・心療内科部長 中井吉英)





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