最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学
「本当は怖い歯の痛み~雇われ店長の悲劇~」
U・Mさん(男性)/55歳(発症当時) レストラン店長
U・Mさんは、チェーン展開しているレストランの店長。
このところ店の売り上げが思ったように上がらず、頭を悩ます毎日が続いて
いました。
そんなある日、本社から突然部長が視察にやってきて、U・Mさんを激しく
叱責。
その時、U・Mさんは左の奥歯に重く響くような痛みを覚えました。
奥歯の痛みは部長が去ると嘘のように消えたため、すぐに忘れてしまった
U・Mさんですが、その後も気になる異変に襲われます。
<症状>
(1)歯の痛み
(2)顎の痛み
(3)ひどいあごの痛み
(4)激しい胸の痛み
<病名>心筋梗塞
<なぜ、歯の痛みから心筋梗塞に?>
心筋梗塞とは、何らかの原因で心臓の血管が詰まり、心臓の筋肉が壊死して
しまう病気のこと。
最悪の場合、死にいたることもある恐ろしい病です。
この病気を引き起こすと考えられている要因は、過度の飲酒や喫煙、偏った
食生活などによって生じる血管の動脈硬化。
U・Mさんの場合も、脂っこい食事を好んで摂り続けていたため、血液中に
大量のコレステロールがあふれていました。
その結果、心臓の血管で動脈硬化が進行してしまったのです。
でも、U・Mさんに現れていたのは、歯の痛みや顎の痛みなど、心臓とは
直接関係ないもの。
これらの痛みは、心筋梗塞とどのような関係があるのでしょうか?
そもそも私たちの体内には、痛みを感知するための神経が、全身に張り巡ら
されています。
しかし、この神経は複雑に入り組んでいるため、心臓で異常が発生しても、
痛みを脳に伝える途中で、他の神経と混線してしまう場合があるのです。
そんな時、脳が心臓の異常を別の場所の痛みと勘違いする症状こそ・・・
「放散痛」。
そう。
U・Mさんを襲った歯やあごの痛みも、実はこの「放散痛」の仕業でした。
U・Mさんの場合、脳が心臓の痛みを歯やあごの痛みと取り違えてしまったの
です。
しかし、この「放散痛」を、心臓の痛みだと気づくチャンスはなかったの
でしょうか?
もちろんありました。
最大のヒントは、痛みを感じた時の状況です。
U・Mさんが痛みに襲われたのは、部長に叱られ強いストレスを感じた
直後や、早朝の寒い中、急いで走った後でした。
実はこうした状況になると、人間の体は反射的に血管を収縮。
動脈硬化が進み、血管が狭まっていると、この収縮で血流がストップして
しまい、心臓の筋肉が一時的な酸素不足に陥ります。
U・Mさんの場合、その痛みが「放散痛」となって現れたのです。
心筋梗塞になりかけていても、心臓の痛みがないまま、歯やあご、肩や腕
などの放散痛だけを感じるケースは少なくありません。
だからこそ大きなストレスがかかったときなどに、何らかの痛みを感じたら、
心筋梗塞から起こる放散痛を疑い、早期に病院を受診することが大切なの
です。
「動脈硬化を防ぐためには?」
(1)高血圧、タバコの吸い過ぎ、お酒の飲み過ぎ、悪玉コレステロールを
増やす油物等の多い食生活などに注意することが大切です。
(2)もしちょっとでも体に違和感を覚えたら、迷わず検診されることを
おすすめします。
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