女性に多い舌痛症とは | アクティブエイジング アンチエイジング
[女性に多いベロの不快症状、いまだ原因不明の「舌痛症」とは]

(JIJICO  2015年9月5日)(飯田 裕 | 医学博士・歯科医)


<女性に多い舌痛症とは>
女性に多いベロの不快症状、いまだ原因不明の「舌痛症」とは「舌の先や、
横側の縁の部分がヒリヒリ、ピリピリと痛む」。
そんな症状に見舞われる「舌痛症(ぜっつうしょう)」という病名を聞いた
ことがあるでしょうか。
舌痛症とは、舌の表面に痛みの原因となり得る器質的な異常や病変
(例えば口内炎などの炎症や粘膜の荒れ、ただれ、腫瘍など)がないのにも
かかわらず、舌が痛んで気になってしまう・・・そんな不快症状です。
圧倒的に女性に多く、症状が何カ月も続くことがあります。医療機関を受診
しても「異常なし」とされ、単なる「不定愁訴」と診断されてしまうことも
あるようです。

不思議なことに、男性にはほとんど見られません。
1990年代から増加傾向で、学会などの臨床統計を見ると、歯の治療が契機に
なって症状が出現することが多いとされています。
私の患者でも「治療に使用された薬剤や金属のアレルギーなどでは」「銀歯が
舌に当たっているからでは・・・」など、ほかの歯科医院で受けた治療に
原因があると考える患者が多いようです。



<舌痛症の原因や、発症のメカニズムはいまだ解明されていない>
舌痛症の人は歯科だけではなく、口腔外科、耳鼻咽喉科、内科など、
さまざまな診療科を受診しています。
しかし、「口内炎」だと診断されるなど、気休めの軟膏やうがい薬などを
処方されて追い返されてしまうケースも多く、外見上、舌に明らかな異常が
なければ「更年期障害」や「うつ病」、単なる「ストレス」でかたづけられて
しまうケースもあるようです。

舌痛症の原因や、発症のメカニズムについては不明な点も多く、いまだ解明
されてはいません。
ただし、診察すると下記のような特徴があります。
1)実際に話すと生真面目な人が多い。
     (経験的には几帳面で、執着心が強い人が多いです)
2)痛みの度合い、痛む範囲が一日の中で変わる(日内変動)、
   日によって変化する。
     (食事中や入浴中など何かに集中している時はほとんど痛まない)
3)歯科治療や身内の不幸、ペットの死などがきっかけで始まることが多い。
4)舌の痛み以外の多彩な症状を同時に訴える患者が多い。
     (舌の異常だけでは起こりえない、口の中の乾き、
             喉の奥の違和感などを同時に訴えることが多い)

以上の臨床的な特徴があることから、メンタルと何らかの関連性があるよう
です。
また、舌がんなどの「がんへの恐怖感」や、何か深刻な病状を想像して
一人で思い悩んでいたり、ストレスや心身疲労が加わると症状が増悪すると
されることからも、心理的要素との関連性がうかがえます。



<専門医療機関を紹介受診するのがもっともスムーズ>
逆にガンの心配はないこと、炎症がないこと、(以前に受けた)歯科治療
箇所は客観的に見て異常がないことなどを、理論的かつ丁寧に話すと気持ちが
楽になったり、症状が緩解される患者が多いように思います。
私は治療に漢方薬などを使っていますが、すぐに改善しない場合もあります。
原因やメカニズムが分からない以上、舌痛症には特効薬や確立された治療法は
現在のところありません。
多くの医師にも舌の痛みを理解してもらえないことから、ドクター
ショッピング(色んな病院を転々とすること)を繰り返す患者も珍しくは
ありません。

もし、あなたが舌痛症を疑って受診するならば、大学病院などの口腔外科や
オーラルメディシン(口腔内科)、メンタルクリニックなどが専門診療科と
なります。
かかりつけの医師、歯科医師がいる人はかかりつけ医に紹介状を発行して
もらい、専門医療機関を紹介受診するのがもっともスムーズな受診方法
でしょう。




http://jijico.mbp-japan.com/2015/09/05/articles18381.html