[痛風発症リスク20倍以上 ビールより怖い遺伝子変異]
(日刊ゲンダイ 2014年9月10日)
「ビールの飲み過ぎが痛風のリスクを上げる」は半ば常識になっているが、
そうとばかりはいえないことが明らかになった。
研究を行ったのは、東京薬科大学病態生理学教室・市田公美教授、防衛医科
大学校分子生体制御学・松尾洋孝講師、東京大学医学部付属病院薬剤部・
高田龍平講師ら。
市田教授に話を聞いた。
これまで尿酸値が高ければ、みな一律に生活習慣改善を指導されてきた。
「ところが今回、遺伝子『尿酸排泄輸送体ABCG2』に変異があると、尿酸の
排泄機能が落ちて体内に蓄積し、高尿酸血症・痛風(以下、痛風)のリスクが
著しく上がることが分かったのです」
最初に、日本人の患者90人を対象に調べたところ、8割が尿酸排泄輸送体
ABCG2の遺伝子変異を持っていた。
遺伝子変異にはさまざまなタイプがあるが、そのうちQ126X、Q141Kの
2タイプが尿酸の排泄機能を著しく下げ、しかも起こる頻度が高い
(持っている人が多い)ことが明らかになった。
「Q126XはABCG2を介した尿酸排泄機能をほぼゼロに、Q141Kは半分に
し、それぞれ日本人では約3%、30%の頻度で見られます」
私たちは父と母から遺伝子を1つずつ受け継いでいる。
その2つの遺伝子を、尿酸排泄輸送体ABCG2の「変異なし」「Q126X」
「Q141K」で組み合わせていくと、尿酸排泄機能は100%、75%、50%、
25%以下の4段階に分けられる。
つまり、フルで尿酸排泄機能が働いている人に比べ、段階的に低くなる。
「痛風患者だけを対象に見ると、遺伝子によって尿酸排泄機能が低い人は、
その数値が低いほど平均的な尿酸値が高く、痛風発作を早く起こして
いました。特に20代、30代で発症した人は、ほとんどが遺伝子変異を持って
いました。次に、健康な男女739人に対しても研究を行いましたが、やはり
排泄機能が低い人は、現在は痛風を発症していなくても、尿酸値が高めだと
分かりました」
痛風発症のリスクは、遺伝子が正常な人に対し、変異がある人は、最大20倍
以上だという。
<肥満や飲酒よりリスキー>
肥満や飲酒と比べるとどうか?
5005人の男女を対象に「人口寄与危険度割合(PAR)」という指標で
影響力を比較すると、肥満(肥満指数BMI25以上)の人は痛風発症への
影響力が18.7%、1週間のアルコール摂取量が196グラム以上のヘビー
ドリンカー(男性の場合)は15.4%であった。
「ところが、尿酸排泄輸送体ABCG2の変異遺伝子を持っている人は
29.2%と、肥満やヘビードリンカーよりも高かった。痛風の発症リスクを
高める生活習慣として指摘されてきた肥満、飲酒よりも、遺伝子の方が
影響力が上だったのです」
尿酸排泄輸送体ABCG2の変異により、尿酸排泄機能が4分の1だけ低下して
しまっている人が1番多い。
ABCG2の変異で排泄機能が4分の1だけ低下するのは、ウイスキーを
1週間に1.7リットル飲むこと、あるいは身長170センチの男性が5.7キロ
太ることと同程度の影響を、尿酸値を上昇させる方向に与える。
まずは遺伝子の型を調べることだ。
外注で行われるので、「ABCG2遺伝子多型解析を受けたい」と希望すれば
どの病院でも可能。
1万5000円。
もし、自分が痛風を起こしやすい遺伝子を持っているなら、より一層の生活
習慣改善が必要だ。
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/153214