腰痛:舌の周りに強い歯形「舌歯圧痕」 | アクティブエイジング アンチエイジング
[体の声を聴く  腰痛 「身」の所見で原因探る]

(読売新聞  2013年9月26日)


腰痛に悩む人はわが国で約2800万人と言われています。


50歳代の男性Bさんも、30年間続く痛みに悩んでいます。
軽い脊柱管狭窄が見つかり20年前に手術を受けたのですが、良くなりません
でした。
手術は成功しているのに、どうして腰痛が続くのでしょうか。

診察をすると、舌の周りに強い歯形がついています(舌歯圧痕)。
首の後ろから両肩にまたがる僧帽筋に、強い凝りと圧痛を認めます。

次に、意識障害や肩関節の筋力をみる「アームドロップ試験」をして
みました。
私は慢性的な緊張の有無を診るのにこの試験をよく使います。
Bさんの両腕を持って肩の位置までTの字のように持ち上げて手を離すと、
彼の両腕は何度繰り返しても落ちません。
これらは、体も心も併せた全体を表す「身」の所見と呼ばれます。

また、腰椎の両側の筋肉を指で押さえると強い痛みを訴えました。
X線やMRI(磁気共鳴画像)などの画像検査では異常を認めません。

以上の体の所見より、
 (1)Bさんは若い頃から歯を噛み締めて頑張って生きてきたため、
    慢性的な緊張を抱えている
 (2)痛みは「筋筋膜性腰痛」という(検査では異常が見つからない)
    機能性の痛みが中心である
ということが分かります。
Bさんの腰痛については、脊柱管狭窄という器質的な病気があったとはいえ、
痛みの大部分は機能性の痛みだったのです。


「腰痛診療ガイドライン2012」(日本整形外科学会・日本腰痛学会編)に
よると、腰痛患者のうち原因の分からない腰痛が85%。
それほど腰痛は難しい。

では、心療内科医はBさんの治療をどのように行うのでしょうか。
詳しくは次回で。

(清仁会洛西ニュータウン病院名誉院長・心療内科部長 中井吉英)





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