上の歯が痛むことから上顎洞癌に | アクティブエイジング アンチエイジング
最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学

『本当は怖い花粉症~危険な鼻づまり~』

N・Tさん/62歳(当時)  木工所経営


40年間まじめに働いていたお陰で、一人娘も無事嫁がせ、今は夫婦2人で
幸せに暮らしていたN・Tさん。
2月に入ってから急に左側の鼻が詰まりはじめたのを不思議に思っていま
したが、娘からそれは花粉症だと言われ、納得。
しかし、たかが鼻づまりと、特に病院にも行かず放っておいてしまいました。
そんなN・Tさんに次々と異変が襲いかかります。


<症状>
(1)左側の鼻だけつまる
(2)黄色く粘ついた鼻水に血が混じる
(3)左目からだけ涙が出る
(4)左の上の歯が痛む
(5)左の頬が腫れる
(6)左の頬が異常に腫れ、激痛がする



<病名>上顎洞癌



<なぜ、花粉症から上顎洞癌に?>
N・Tさんの身体を蝕んでいたのは、花粉症ではなく癌でした。


私たちの鼻の穴は、「副鼻腔」と呼ばれるいくつもの空洞につながって
います。
その1つが「上顎洞」。

上顎洞癌とは、文字通りこの上顎洞が癌に冒され、最悪の場合、死に至る
こともある病。
現在、この病気を発症する人は年間およそ1,000人。
中でも多いのが50代以上の男性です。

そして花粉症の時期に症状が出た場合、花粉症と勘違いしてしまう可能性が
ある恐ろしい病なのです。


ではなぜN・Tさんは癌に冒されてしまったのでしょうか?
実は上顎洞癌が発症する詳しいメカニズムは、まだ解明されていません。

しかしN・Tさんの場合、その原因の1つにホコリが考えられました。
作業場で毎日ホコリを吸い続けたN・Tさん。
すると上顎洞の粘膜を覆う線毛細胞が傷つき、炎症が起こります。


そして、これに拍車をかけたのが40年以上に渡る喫煙でした。
タバコの刺激で上顎洞の炎症は、しだいに慢性化。
ついには細胞が癌化してしまったのではないか、と考えられるのです。


そして上顎洞癌の最も恐ろしいところは、癌が出来てもしばらくは何の症状も
出ないこと。
これは癌が何もない空洞の中で成長するためなのです。


そしてようやく現れた最初の症状が、左側だけの鼻づまりでした。
この時、2センチほどに成長した癌が、左側の鼻腔を圧迫。
そのため、左側の鼻だけが詰まったのです。
これこそが花粉症と上顎洞癌を見分ける決定的な症状。
花粉症の場合は、両方の鼻が詰まります。
しかし上顎洞癌の鼻づまりは、必ずどちらか片方だけなのです。
それは癌が左右両方同時に出来ることがまずないため。

さらにもう1つ、花粉症との大きな違いがあります。
それがあの血が混じり、黄色く粘ついた鼻水。
花粉症の鼻水は、水のように透明でサラサラの場合がほとんど。
一方、上顎洞癌の場合は、癌細胞の一部が腐り始めることで、悪臭を
ともなったウミとして排出されます。
同時に癌そのものからも出血するので、あのような鼻水が出たのです。

もしこの時点で耳鼻科に行き、CTやMRIなどの検査をしていれば、癌を
早期に発見することができたはず・・・。

しかし、不運にもN・Tさんは、自分を花粉症だと思い込んでしまいました。
そしてたかが鼻づまりと放置したことが命取りだったのです。


最初の鼻づまりから1ケ月後に現れた、あの片側だけの涙目。
あれは4センチほどに成長した癌が、上顎洞の上の方へと進行し、涙管を
圧迫。
行き場を失った涙があふれ出たために起きたもの。
鼻づまりと同じく、目の症状ももちろん左だけ、顔の片側だけに症状が出る
のが、この病気の特徴なのです。


そしてついに意外な場所に症状が現れました。
あの歯の痛みです。
すぐさま病院へ行ったN・Tさんですが、痛みの本当の原因は、実は歯では
なくやはり癌でした。
癌が今度は上だけでなく、下の方にも増殖。
歯の神経を刺激したためズキズキとした痛みに襲われたのです。


そして癌細胞は日に日に増殖を続け、ついに頬の骨を突き破ってしまい
ました。
N・Tさんを襲ったあの左頬の異常な腫れと痛みは、これが原因。
病院に運び込まれた時、上顎洞癌はなんと6センチにもなっていました。


こうなるともはや手遅れ。
癌は眼球の奥から脳へと進行。
癌細胞からの出血が頭蓋骨の内側に広がり、その結果、脳を圧迫。
機能を停止させてしまうのです。


入院から2ケ月後、治療の甲斐もなく、N・Tさんは命を落としました。
鼻づまりや涙目といった何気ない症状を、花粉症だと思い込んでしまったが
ための悲劇でした。


「上顎洞癌にならないためには?」
(1) 鼻腔の炎症などに気をつけ、鼻を常に健康に保つ
(2) 埃の多い場所、空気の悪い場所を避ける
(3) 喫煙暦の長い方は注意
(4)もし、鼻や頬に違和感をもったなら、耳鼻科などでの検診を
     お勧めします





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