[「私のせい」悩む子へ 親の精神疾患、絵本で説明]
(中日新聞 2013年10月25日)
親が精神疾患の子どもの中には、親の変調が病気のせいと分からず、「私の
せいかも」と思い悩むケースがある。
そんな子どもたちに、病気を分かりやすく説明する絵本を、埼玉県の精神科の
医師と看護師の女性2人が作っている。
9月には2冊目、3冊目の絵本を出版した。
新刊は「お母さんどうしちゃったの・・・統合失調症になったの・前編」と
「お母さんは静養中 統合失調症になったの・後編」。
昨年出したうつ病編「ボクのせいかも・・・お母さんがうつ病になったの」に
続くシリーズ。
看護師の細尾ちあきさんが物語を考えて絵を描き、医師の北野陽子さんが、
本編の後に続く解説を担当している。
絵本は病気がひどくなる時期と、退院後の静養の時期に分け、小学校低学年の
女児の心が揺れ動く様子を紹介。
子どもと接するヒントになる描写をちりばめている。
一例は、親の精神疾患の症状に接した女児が、「わたしが言うことをきかな
かったから?」と思い悩む様子の描写だ。
「子どもは、大人が考える以上に、周囲の心配な物事と自分の行動を関連
づけて考えてしまう」と北野さんは説明する。
加えて、精神疾患は説明が難しく、子どもは十分な説明を受けないことも
多い。
「いい子にしていたら治る」と言われ、治らないのは自分のせいと悩む例も
ある。
家の中に病気のことは話さない、聞けない、という暗黙の雰囲気があることも
多いという。
絵本の中では、症状が悪化し、入院した母の帰宅を祈って待つ女児と、その
不安を解くように母の病気を話して聞かせる父親も描かれる。
「お父さんの声が私の胸にホワンとひろがった」という女児の表情が印象的
だ。
「病気を説明するツールがあれば、子どもの支援の幅が広がる」と考えたのが
絵本作りの原点。
2人は昨年3月まで勤めていた、さいたま市こころの健康センターで問題
意識を共有し、同4月に事業所「プルスアルハ」を設立。
絵本の制作と普及活動をしている。
本は子どもの状況などを考慮して、読み聞かせたり、家族が病気の場合に
子どもの気持ちを理解し、接するヒントにしたりと、いろいろな活用法が
考えられる。
「家族だけでなく、精神疾患の人たちを支援する人たちも手に取ってもらえ
たら」と北野さんは話す。
細尾さんは「悩みを抱え込んでいる子もいる。『自分の気持ちを大切に。
困ったときは大人に話していいんだよ。みんなが応援しているよ』という
メッセージも込めた。絵本がきっかけになり、つながりが広がれば」と語る。
「子どもは事実を受け止め、乗り越える力がある。それを信じて、周囲の
大人が接してほしい」と2人は訴える。
(佐橋大)
http://www.chunichi.co.jp/article/living/life/CK2013102502000003.html