耳・鼻・のど 中耳炎:1 レーザーで鼓膜に穴、膿出す | アクティブエイジング アンチエイジング
[耳・鼻・のど 中耳炎:1 レーザーで鼓膜に穴、膿出す]

(朝日新聞  2010年4月20日)


静岡県の片山幸成くん(5)は、生後数カ月のころから、鼻汁が絶えな
かった。
母の有美さん(30)は市販の器具を使ってこまめに鼻汁を吸い取り、多い時は
週に5日、吸引のために医師を受診した。

1歳を過ぎると、ぐずって泣き叫ぶことが多くなった。
抱き上げても、授乳しても泣きやまない。
有美さんは、どうしていいかわからなかった。
名前を呼んでも反応しないことがあるのも気になっていた。

「中耳炎になっていますね」
2006年5月、かかりつけの、かみで耳鼻咽喉科クリニック(静岡県富士市)
で、上出洋介院長(59)に言われた。
急性中耳炎だった。


子どもの場合、風邪などで鼻汁がたまると、細菌やウイルスが「耳管」を
通じて中耳に入りやすい。
炎症が起きて熱や痛みを伴う急性中耳炎は乳幼児の多くが発症するが、
1~3週間で治る。


上出院長は抗生物質を処方し、鼻汁の吸引を続けた。
鼓膜の様子を見ていて、治りにくく、長期化しやすいケースだと判断した。
そこで、レーザーで鼓膜に穴を開け、チューブを入れて膿を外に出す治療を
提案した。
この方法は、出血がほとんどない。
レーザーの機械に入力することで、穴の大きさを細かく設定できる。

有美さんは診察のたび、耳の中を映したモニター画面で説明を受けていた
ので、幸成くんの状態がよくわかっていたし、上出院長のことも信頼して
いた。
ただ、「レーザーで鼓膜を焼くなんて、かわいそうかな」と心配もした。
「良くなるならやってもらったほうがいい」という夫の言葉で、決心できた。

中耳炎の診断から約10日後、有美さんは幸成くんを後ろから抱えた姿勢で、
クリニックのいす型の診療台に座った。
動かないよう、看護師が幸成くんの頭をおさえた。
上出院長は、麻酔がかかった耳の中に機械の細長い先端部を入れ、鼓膜に
レーザーを当てた。
1秒もかからなかった。
その後、直径0.9ミリ、長さ12ミリのフッ素樹脂製のチューブを差し込んだ。

治療の間、有美さんは「これで治るから。頑張って動かないでね」と心の中で
言いながら、大声で泣く幸成くんの体を抱きしめた。
約15分の治療が終わると、有美さんはびっしょりと汗をかいていた。



(南宏美)



http://www.asahi.com/health/ikiru/TKY201004190367.html