[耳鼻咽喉科(1)中耳炎 手術後も再発多く]
(読売新聞 2010年2月24日)
耳だれや耳鳴り、難聴――。
大阪市の会社員男性(57)は子どものころから、左耳の中耳炎に悩まされて
きた。
中耳は、鼓膜やその奥の空洞(鼓室)、内耳に音を伝える骨(耳小骨)など
からなり、鼻の奥とつながっている。
ウイルスや細菌感染による炎症で鼓室にウミがたまると、耳だれや発熱などの
症状が出る。
鼻汁の吸引や抗菌薬を使った治療で良くなるが、炎症を繰り返すと、鼓膜が
何度も破れて穴が閉じず、耳だれが止まらなくなるなど、慢性化する。
鼓膜の周辺に皮膚組織が増殖し、真珠腫と呼ばれる固まりができる場合も
ある。
症状が重ければ手術が必要なこともある。
男性は1歳の時、はしかにかかったのがきっかけで、中耳炎になった。
炎症を繰り返し、8歳で「真珠腫」を取り除く手術を受けたこともあるが、
症状は治まらなかった。
中耳炎は手術をしても、再発を繰り返す人も多い。
男性は大人になっても通院治療を続け、2日に1回、綿棒で耳を掃除して
やり過ごしてきた。
耳だれや耳鳴りがやまず、「耳のことが片時も頭を離れたことがなかった」と
振り返る。
2007年、耳だれの量が急に増え、左耳では大きな声さえ聞き取りにくく
なった。
同市内の大阪赤十字病院を受診したところ、長年放っていたせいで、耳小骨が
ほとんど溶けていた。
真珠腫を取り除き、人工骨を用いて耳小骨を修復する手術を、半年ほど空け、
2回に分けて行った。
おかげで、右耳ほどではないが、手術前よりも、よく聞こえるようになった。
耳だれの症状もなくなった。
手術は、耳の後ろの頭蓋骨を数センチ切開し、顕微鏡でのぞきながら行う。
損傷の程度によって修復法も様々で、近くには顔面神経もあり、高い技術が
必要だ。
治療実績は、耳の手術の実力を見る指標になる。
読売新聞が実施した全国主要病院への2008年治療実績アンケートでは、
手術件数が最も多かった同病院をはじめ、特定の施設に集中する傾向が
みられた。
同病院副院長(耳鼻咽喉科部長)の岩永迪孝さんは「手術は7~8割が
治るが、思ったように聴力が改善しない場合もある。手術を受けるか
どうかは、症状以外に年齢や一方の耳がどの程度聞こえるかなど、生活の
不自由の具合によって判断する必要がある」と話す。
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=21207