[一部の抗生物質とカルシウム拮抗薬の併用は低血圧をもたらす]
(HealthDay News 2011年1月17日)
カルシウム拮抗薬と呼ばれる降圧薬を使用する高齢者が特定の抗生物質を併用
すると、危険なレベルの低血圧を発症し、ショックに至るリスクが増大する
ことがカナダの研究により明らかにされた。
カナダ、サニーブルックSunnybrook研究所(トロント)のDavid Juurlink
博士によると、危険な抗生物質はエリスロマイシンおよびクラリスロマイシン
の2種類。
カルシウム拮抗薬とともにエリスロマイシンを服用すると、低血圧により入院
するリスクが6倍、クラリスロマイシンではほぼ4倍となるという。
このような相互作用については約20年前から知られていたが、リスクを定量化
したのは今回が初めて。
上記2製剤と同じマクロライド系抗生物質であるアジスロマイシンはこの
ような問題を引き起こすことはないという。
この報告は、カナダ医師会誌「Canadian Medical Association Journal
(CMAJ)」オンライン版に1月17日掲載された。
今回の研究では、1994~2009年にカルシウム拮抗薬を使用していた66歳
以上の患者のデータを収集。
このうち低血圧で入院した患者を分類し、入院前にマクロライド系抗生物質を
使用していたかどうかを調べた。
その結果、7,100人が低血圧またはショックで入院しており、エリスロ
マイシンまたはクラリスロマイシンの服用によりリスクが増大することが
明らかにされた。
この2製剤は肝臓でカルシウム拮抗薬を分解するのに必要な酵素を阻害する
ことにより、危険な低血圧を引き起こすとJuurlink氏は説明している。
米マイアミ大学ミラー医学部教授のBarry J. Materson博士によると、
グレープフルーツ果汁も同じ酵素を阻害し、カルシウム拮抗薬の濃度上昇を
もたらすことがあるという。
今回の研究は、抗生物質を使用する原因となった感染症によって低血圧または
ショックを来した患者の数が明らかにされておらず、グレープフルーツ
ジュースを摂取していた人の数がわかっていない点でも限界があると
Materson氏は指摘している。
同氏は、「いずれにせよ医師、薬剤師および患者は、グレープフルーツ果汁
およびマクロライド系抗生物質(アジスロマイシンを除く)がいずれも
カルシウム拮抗薬の血中濃度を上昇させ、低血圧やショックを引き起こす
可能性のあることを理解しておくことが重要である」と述べている。
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