大病院に行くなら紹介状 | アクティブエイジング アンチエイジング
[大病院に行くなら紹介状]

(朝日新聞  2011年10月10日)(内科医・酒井健司の医心電信)


前回は、大病院での初診時に7千~1万円程度の追加の患者負担が求められる
ようになるかもしれないという話をしました。
現時点ではあくまでも案に過ぎず、今後はどうなるかまだわかりません。

その話とは別に、既に現在でも、大病院に紹介状なしで受診すると、追加
料金を求められることがあります。
選定療養と言います。

厚生労働省のページによれば、「病院と診療所の機能分担の推進を図る観点
から、病床数が200床以上の病院において、他の医療機関からの紹介無しに
初診を受けた患者について、選定療養として、初診に相当する療養部分の
費用を患者から徴収することができ・・・」とあります。

ちなみに、各医療機関で値段をつけることができ、平成21年7月時点で、
平均1,900円、最高8,400円、最低105円とのことです。

「病院と診療所の機能分担の推進を図る観点・・・」などと言われると
わかりにくいですが、要するに、「診療所でも診れる病気で大病院には
なるべく受診しないでください。どうしても受診したいのなら、追加料金を
支払ってください」ということです。

患者さんの中には、大きな病院が好きで、普通の風邪であってもいきなり
大学病院を受診するような方もおられます。

医師には応招義務があり、正当な理由がなければ患者さんからの診察の希望を
断ることができませんから、そういう方も診察を受けることはできます。
ただ、そういう方が多くなりますと、医療者が忙しくなりすぎて、大学病院で
しか診れない病気の患者さんの診療に支障が出るかもしれません。
ただでさえ、大学病院の外来って、混んでいますしね。

海外には医療機関を患者さんが自由に選べない国もありますが、日本では
フリーアクセスということになっています。
患者さんの選択肢が多いという点では良いのですが、弊害として医療資源の
無駄遣いが生じます。
紹介状なしの初診の患者さんに負担を求める初診時選定療養費制度は、
緩やかなアクセス制限にはなりますが、無駄を減らすのには役に立って
います。

また、医療機関ごとに値段を設定できますので、各病院の事情を個別に反映
できます。
200床以上の病院がすべて専門的な診療を行っているわけではありません。
「ウチは別に紹介状なしの初診患者さんに受診していただいても困らないよ」
という病院は初診時選定療養費を取らないか安く設定し、「いやいや、
できれば紹介状を持ってきてもらいたいなあ」という病院は高く設定すれば
よいのです。


自己負担額だけでなく、医学的な理由からも、紹介状なしにいきなり大病院
受診するのは損である場合が多いと思います。
病気の種類が特定できていない段階では、大病院の専門医よりも、診療所の
医師のほうが診るのが得意なことが多いです。

また、「診療所に通院していてもなかなか良くならないから大病院で診て
もらいたい」と思ったときでも、それまでの経過は大事な情報ですから、
ぜひとも紹介状を書いてもらうべきです。


「なんとなく大きな病院のほうが安心」という理由で紹介状なしで大病院を
受診し、来院して初めて追加料金が必要であることを知る患者さんもいます。
「制度のことを知っていたら、近所の診療所に受診したのに」という声も
聞きます。
病院に来ておきながら、受診手続きをせずに帰られた患者さんもいらっしゃる
でしょう。

紹介状なしに大病院に受診するのは損であることをもっと知ってもらいたい
です。


https://aspara.asahi.com/blog/ishin/entry/32DsRhJPvO