産経新聞より
[補聴器「通販は避けて」 「難聴は病気」→耳鼻科へ検査]
■集音器と酷似→専門店で購入
インターネットやカタログなどを通じて通信販売されている
補聴器、集音器には、「音量が大きすぎる」「会話に適さない」
など、問題のある商品が少なくないことが、国民生活センター
の調査で分かった。
通販では使う人の聴力や耳の形に合わせたフィッティングが
行われないため、健康被害が出る恐れもあるという。
(田辺裕晶)
国民生活センター商品テスト部によると、補聴器は薬事法で
定められた「管理医療機器」で、製造や販売について一定の
基準がある。
一方、集音器は同様に耳につけて使うが、同法の認証を受けて
いない。
このため集音器は、難聴者の使用をすすめるような効能・効果
を宣伝することが禁止されている。
同センターは今年2~7月、複数の通販で販売されている
補聴器5機種と集音器5機種を購入し、安全性や補聴効果に
ついてテストした。
補聴器や集音器は、最大出力が大きすぎると聴覚に悪影響を
与える恐れがある。
そこでボリュームを最大にして、90デシベル(トラックの往来
などに相当)の音を入力した結果、補聴器3機種、集音器
4機種で、日本補聴器工業会の出荷基準である120デシベルを
超えた。
また会話音を聞き取りやすくするため、補聴器は1,000ヘルツ
以下の低音よりも、2,000~3,000ヘルツの高音を増幅する
仕組みになっている。
だが補聴器2機種と集音器5機種は逆に高音より低音の増幅が
大きかった。
低い音を増幅する機種は健常者が聴けば音が大きく、軟らかく
聞こえる。
だが「ま」と「な」、「た」と「か」など難聴者が聞き分け
づらい音声を区別するには高音を増幅しなくてはならず、
こうした機種は会話に適さない。
さらにハウリング(ピーピーと勝手に音が鳴る状態)が起こり
やすい機種や、電力の消費量が極めて大きいために年間で
10万円前後の高額な電池代が必要な機種もあった。
「補聴器は医療機器。事前の相談やアフターケアを受けられ
ない通販での購入は、避けるべきです」。
帝京大学医学部の小寺一興教授(耳鼻咽喉科)は話す。
通販でまず起きる問題は、「必要ない人が買ってしまう」こと
だ。
加齢に伴い聴力が衰えても、補聴器を使うほどの状態でない
ことも多い。
このため不用意に購入した結果、「買ったけれど使わなかった」
という相談が絶えないという。
さらに小寺教授は、集音器についての問題点を強調する。
集音器はバードウオッチングなど健常者が楽しむための商品で
あるにもかかわらず、難聴者の使用に適しているかのような
広告・宣伝が多いという。
「宣伝を信じて買う人も多いが、難聴者が使っても役に立た
ない。さらに健常者用だから大きな音が出る物もあり、耳を
痛めて逆に難聴が進行します。非常に悪質です」と語る。
安全に買うにはどうしたらいいのだろう。
小寺教授によると「難聴は病気です。まず耳鼻科で検査を受け、
信用できる販売店で購入することです」という。
日本耳鼻咽喉科学会では平成18年から補聴器相談医制度を開始。
委嘱された全国約3,000人の耳鼻科医が、購入した補聴器が
役に立つかの判断や、店に対して機種の再検討・再調整の依頼
などを行っている。
「中には必要以上に高い機種を売りつける店もある。学会の
ホームページで最寄りの相談医を検索し、購入前に話を聞いて
みては」と小寺教授はアドバイスする。
日本補聴器工業会によると、補聴器を販売している店は全国で
約6,000店(推計)。
うち日本補聴器販売店協会に加盟している店は約1,000店。
また専門設備を備え、認定補聴器技能者が常駐する認定補聴器
専門店は500店に満たない。
工業会では「加盟店や専門店なら医療機関との連携もあります。
協会のホームページで検索するか、工業会((電)03・5283・
6244)に問い合わせてほしい」と話している。
[出典]産経新聞
http://www.sankei.co.jp/seikatsu/seikatsu/070920/skt070920000.htm