・では、竹中さんより小西さんへの質問です。
竹中
監修と演出の違いってなんだすか?
小西
根本的には「配役」をするって事だから。
竹中
う…ん、うーん。
小西
配役させてもらえないものは、演出する事にならない。それはお稽古を付けるだけ。正直自分の作品じゃないみたいだよね。
竹中
うん…
小西
配役をするって事は演出するって事の7、8割だから。次に美術、音楽があって残りの8%〜10%位に説明が必要。「何が」創りたいかというメッセージだから配役は。配役する事が大きなメッセージで無い演出家の人は見てても面白くはないから。観ている人に、こうゆうのが創りたいのだなって期待をささたいじゃない?
竹中
ええ。
小西
だから、まぁ役者さんには色々な勉強をさせたいけど、最終的には役を固定していきたい。固定した状態で見たいし、この人のこうゆう役は安心して観られる、っていう。
アクトはまだそこまで成熟していないなら手を出さないだけで、本質的にはそこ。出来ればそこ。
竹中
キャスティング決めの第1パターンで断られたりとかあったと思うんですけど、やっぱりそこを…
あー、もちろんあるよね。
竹中
何パターンか創っておく中、コレっ!てなった時に美術だったり音楽だったりとかは、決まってたりするんですか?
小西
この人が出るならコレがいいとか、この人がこの役なら美術はコレが良いとか。そうゆうのは、自分の芸術性とかイマジネーションとどれだけ向き合うかってのが絶対大事。先に音楽、美術が決まってて役者さんどうぞっていうのは、ちょっとエゴいスティックだなと思っちゃう。
竹中
あー
小西
ウチの場合、岩崎友香ちゃんと福井美沙葵ちゃん、どちらが主役かで大分つくるものが違ってくる。去年11月、上野で演った「野鴨」は、元々配役が逆だったけど、友香ちゃんがどうしてもヘドヴィを演りたいって言うから「じゃあ」って思って演出も変わったし「じゃあ」って思って音楽も変わったし、美術も他の配役も変わったわけだよね。そのお陰で凄い努力しないといけないから成功したわけで。
竹中
ええ。
小西
正直、その配役が逆なら俺はそんなに苦労はなかった。こっちは幾つもパターンがあるから成立させる事は難しくない。だからいつも必ず言っているけど、演りたい役があったら言っていい。ウチでは言った者勝ち。その代わりね、自分がその責任を負いますって意味だから努力はしてもらわないといけないし。なんというか、結局は「人」でしか成り立たないから演劇っていうのは。その部分はどうしても口出したい。この人達だからコレが出来るんだっていう信じ方をして、モノを創りたいから。だからか、配役で失敗する事が無くなってきている。
先月に演った「僕の東京日記」では、配役は凄い良かった。これでやって良かったなと凄い思ったし、そうやって教わってきたしね、俺は。先生から配役は大事だって、配役が全てだって。それを守ってるお陰でそんなに、大きな失敗はしない。
それは演出するっていう責任上そうだし、演出するっていう楽しみもそこにあるから。俺はもう20歳から先生に全部配役していいって言われて、戯曲20本渡されて「お前アクトにいる誰で演りたいか、お前全部書け」って。それで全部配役して渡して。そしたら5割くらい変えられちゃって、
「わかってない」って。
竹中
ぅええ〜〜
小西
「こいつはコレとコレだ」って言って、それでなるほどって。それで出来上がった作品を見たら先生の方が正しくて。3年目では3割ぐらい違くて4年目にまた全部書いてもってったら「もうコレこのままやっていい」「でも先生こいつは、コレは嫌だ」って言われて(笑)
6年目7年目になってきたら「お前全部自分で決めていい」って「先生は、それで稽古だけみてやる」って。
やっぱりそうやって育てて貰ったからこそ、育ててもらうって事は凄い幸せな事だし、出来たら竹中さんだけじゃなく皆が思っているトコロまで育ててあげたいなって思う。ただ、それは俺が思って準備する事も半分必要だけど、向こう側がどこまで行きたいのかハッキリ決めて俺と向き合っていかないと出来なくて。
それだけの意気込みで俺と付き合ってる人が、今はまだ全然いないから、そこはこれから先に必要な事じゃないかと思うし。だから誰かが演出するって言ったらそれはちゃんと見たいなと思うし。
お弟子さんっていうのは師匠を越えてなんぼ、だから、そうなる様にしているし。まだ40歳だしね俺。ウチの先生が60歳の時にしりあったから、どう考えたってあの人を越えるまで後20年はこれをやらないといけないと思ったら、皆にそれだけ気長なものは、そんなに求められない。本質的には。まぁ、もうちょっと、こう、色んな事がこうゆうのを皮切りに、少しずつでもいいから変わっていくと嬉しいなと思ってやって貰ってる。まあ、ちょっと頑張って。
竹中
ありがとうございます。
・最後、竹中さんに。
この対談で思った事感じた事、そしてお客様に一言お願いします。
竹中
えと、そーですね。確かに、その半年間の稽古の中で言葉で伝えるって本当に難しくて、自分が具体的になってない事は何一つ伝わらないというのが実感としてありましたね。今回お話しして頂いた通り、表層で親ってしまう事が多くて。
その先の、役者さんと一緒に感動したりとか、奮い立たせたりとかはココ1ヶ月ぐらいになってやっと…ぼんやりと伝わってきたのかな、伝えられそうだな、みたいになってきて。
だからこの5ヶ月間が本当に苦しくて、役者さんにも凄い苦しい思いをして頂いたのかなと、思い返しました。
えー、最後になりますが、私はアクト青山に4年在席し、初めて演出をさせて頂いきますので、役者としての竹中春菜ではなく、演出をする竹中春菜として1回真っ更にしてみていただければとても嬉しいです。
・はいーありがとうございます。
それでは、監修小西優司さんと『かんしゃく玉』演出竹中春菜さんによる対談でした。
お二人ともありがとうございました。