千佳子を追いかけて坂道を下り最初の角にさしかかると、彼女はひょっこりと姿をあらわした。
「遅い!」
「ごめんごめん。でも急に駆け出したりしたら危ないじゃないか。」
「はーい。ねぇ、ここでコーヒー飲もうよ。」
と言って彼女は後ろの喫茶店を指さす。それほど大きくはない店構えで、『アロマ』という看板が出ている。千佳子のお気に入りの店だ。
「いいよ。そうしよう。」
そう言って店に入り、僕らはコーヒーを2杯ずつとサンドイッチを一皿食べた。
僕らは食べながら、ちゃんとした喫茶店と、ちゃんとしたバーのサンドイッチは必ず美味しい、という話しをした。それがどういう理由からかは解らないけど、とにかくサンドイッチを食べるなら、ちゃんとしたバーか喫茶店に限る。と結論づけた。くちひげをはやしたマスターが僕らの席に来て、
「うちのは、大丈夫かな?」
とニッコリ笑って聞いて来た。僕らは二人してびっくりしてしまったけど、声を合わせて、
「美味しいです!」
と言ったら、マスターはもう一杯ずつコーヒーをご馳走してくれた。
店を出て空を見上げると、太陽はもう随分高い所に昇っていて、汗ばむくらいの暑さだった。僕はシャツの袖を捲くり、千佳子とならんで歩いた。特に行くアテもなく、特に予定のない、休日の散歩。そのまま1時間ほど二人で歩き、またもとの道を帰った。坂道にさしかかる頃には、僕はシャツを脱ぎ、Tシャツ一枚ですむくらい暑くなっていた。
「ねぇ、最近少し太ったんじゃない?あなた。」
「そうかな?運動しなくなったからね。付き合いなんかもあるしさ。大学生の時とは違うかな。」
「太ったわ。絶対。お腹なんかちょっとプニプニしてるもん。小太りさんだ。小太りさん。」
彼女はそう言ってケラケラ笑った。犬の散歩をしている子供がびっくりしてこっちを見た。「幸せ太りだよ。」と言おうと思ったけど、やめておいた。言うまでもない事のようなきがしたから。
家に帰って、音楽を聞きながら昼寝をした。開け放たれた窓から、温かな風が入って来ていた。彼女は眠る前に一言、
「春眠暁を覚えず。」
と、小さな声で言った。
「遅い!」
「ごめんごめん。でも急に駆け出したりしたら危ないじゃないか。」
「はーい。ねぇ、ここでコーヒー飲もうよ。」
と言って彼女は後ろの喫茶店を指さす。それほど大きくはない店構えで、『アロマ』という看板が出ている。千佳子のお気に入りの店だ。
「いいよ。そうしよう。」
そう言って店に入り、僕らはコーヒーを2杯ずつとサンドイッチを一皿食べた。
僕らは食べながら、ちゃんとした喫茶店と、ちゃんとしたバーのサンドイッチは必ず美味しい、という話しをした。それがどういう理由からかは解らないけど、とにかくサンドイッチを食べるなら、ちゃんとしたバーか喫茶店に限る。と結論づけた。くちひげをはやしたマスターが僕らの席に来て、
「うちのは、大丈夫かな?」
とニッコリ笑って聞いて来た。僕らは二人してびっくりしてしまったけど、声を合わせて、
「美味しいです!」
と言ったら、マスターはもう一杯ずつコーヒーをご馳走してくれた。
店を出て空を見上げると、太陽はもう随分高い所に昇っていて、汗ばむくらいの暑さだった。僕はシャツの袖を捲くり、千佳子とならんで歩いた。特に行くアテもなく、特に予定のない、休日の散歩。そのまま1時間ほど二人で歩き、またもとの道を帰った。坂道にさしかかる頃には、僕はシャツを脱ぎ、Tシャツ一枚ですむくらい暑くなっていた。
「ねぇ、最近少し太ったんじゃない?あなた。」
「そうかな?運動しなくなったからね。付き合いなんかもあるしさ。大学生の時とは違うかな。」
「太ったわ。絶対。お腹なんかちょっとプニプニしてるもん。小太りさんだ。小太りさん。」
彼女はそう言ってケラケラ笑った。犬の散歩をしている子供がびっくりしてこっちを見た。「幸せ太りだよ。」と言おうと思ったけど、やめておいた。言うまでもない事のようなきがしたから。
家に帰って、音楽を聞きながら昼寝をした。開け放たれた窓から、温かな風が入って来ていた。彼女は眠る前に一言、
「春眠暁を覚えず。」
と、小さな声で言った。