この時期になると、春のイタリアを思い出す。
もう、13年も前なんだ。
フィレンツェは京都に良く似た、小さくて美しい町だった。
自転車があれば、どこにでも行けた。
僕は観光名所のほとんどをまわらず、アルノ河のほとりでお昼ご飯を食べたり、泣いたりした。
あのころ、僕はまだ18歳だった。
20歳までの2年をどんな風に過ごすか、人生に悔いはないかずっとそのことを考えていた。
でもね。あと、一月ちょっとで31歳になるんだ。
不思議だ。
僕はあとどれだけ生きていられるだろう。
こんなに長く生きて、こんなに遠くまで来られるなんて思ってもみなかったから。
ちょっと不安なんだ。
春が、僕のどこかで蠢いている。
