余談だが、コンキリエ宰相との会談を終えたリガトーニ王はその足で王女であるボンゴレの部屋へと向かった。その足取りは重く、部屋まで5分ほどのところを実に一時間を要したという。
「ボンゴレ、ボンゴレ。」
生来の気の小ささからか、ノックの音も呼ぶ声も蚊の鳴くような音だったが、意外にもドアはすぐに開いた。
「なに?」
「いや、元気か?」
「は?」
「いや、元気かなぁと。」
「それだけ?」
リガトーニ王の左手はプルプル震えていた。怖いのだ。
「少し、話しておかねばならぬ事がある。王位継承者のことだ。入ってもよいか?」
王女はドアを大きく開けて、彼を招き入れ椅子をすすめた。
「で?」
リガトーニ王は小刻みに貧乏ゆすりを始めた。緊張しているのだ。
「コンキリエと計った結果、隣国ジャッポーネよりナポリタン姫を招く事にした。」
「王子は?」
「国より募集する。」
「そんな話し、聞いた事ありませんわ。王子を募集するだなんて。ねぇ、あなたはこの国を何だと思っていらっしゃるの?」
「その事なんだが…。実は…。」
「なに!?」
「実はわしが昔、パンチェッタ嬢に産ませた子が、おる。カルボナーラ男爵という。そなたも噂くらいは聞いておろう。その子を婿として、いや、王子として王室に入れようと思う。」
「ありえない!」
「なぁ、ボンゴレよ。その気になれば君は非凡な女になれる人だ。親友になって、この国の一大事を一緒に乗り切ってくれ。」
「気でもちがったのね!!」
「ああ、そうだよ!」
「ほんとうに、ありえない。」
王女は泣き出してしまった。無理もない。どこの馬の骨とも知れない女が産んだ子が王子になるというのだ。
「分かっちゃくれない、分かろうともしない。」
リガトーニ王はそう言って静かに部屋から出て行った。部屋には硬質な沈黙と、王女のすすり泣く声だけが響いた。王女はこの件を理由に、ナポリタン姫の入城と交互して実家のディズ○ーランドに帰ってしまう。王はその事をひどく嘆いたが、国の大事を救う事こそ先決というコンキリエの進言を入れひとまずは諦める。
コンキリエはというと、その後何度もディズ○ーランドに使者を送り、「王女が一番かわいいって。」と言い続け半年の後、王室に復帰させている。この一件以来、リガトーニ王はコンキリエに対しても頭が上がらなくなり、王室内での立場はほとんど無くなったと言われている。