モノ作り、というのは基本的に日々理想と現実の比べっこ、ということになる。

高い理想(或いは目標)なくしては、素晴らしい結果というものを得ることは不可能なのは前回どこかで書いた限りである。

しかし多くの場合、モノ作りの最大要素は「締め切り」ということになる。

永遠無限の時間の中で製作されるのではなく、与えられ限られた時間の中で望まれる最大の結果を出すことこそ本質的な「才能」の在り方だと思う。

昨日は、随分迷う稽古だった。

今までどうりのラインでやっていけば、それはきちんとした形の物になるに違いないし、不満ももちろんない。

しかし、垣間見えてしまった可能性を僕は見過ごすということはどうしても出来ない。

前回よりも面白いことや、ウェル・メイドであることなどは既に目標なんかではないのだ。

現実的にあと5回しかない稽古で、どこまで出来るかというようなチャレンジでもなく、僕が描きたかった物はなんなのか、というある種の理想論と昨日は長い時間戦った。

結局、僕は理想論に手を出したわけだが、その結果として何が不足していて、何が良かったのかがはっきりした。

そのことのほうが重要なのだ。

埋め合わせていかなくてはならないピースは随分増えた。

でも、理想論を採らなかったとしてもどのみち埋めるべきピースは存在したのだ。それなら昨日の選択がもう一度、僕たちを焚きつけて、あるべき形へと向かわせてくれることを信じるほうがいいのだ。


何よりも、各個人がこの二ヶ月で予想以上に成長したことが感動した。