小さな黒い下着だけを身につけて、彼女がベッドに横になり、一心にTV画面を見つめている。
「何見てるの?」「映画」「面白い?」「全然」そっけない返答とはウラハラに彼女はどんどん画面に吸い込まれていくように見える。
「ねぇ、この女優さんなんて名前?」そう彼女が尋ねたので僕はTVを見る。映画は「さよならをもう一度」だった。
「イングリッド・バーグマンだよ」「ふーん。ねぇ、シャンパンとって」僕はテーブルに置いてある飲みかけのシャンパングラスを彼女に手渡す。「この人って、オリエント急行殺人事件にも出てたわよね?」
そう、女は時に美しい恋人であり、時に冷淡な横顔を見せる。そこに魅力の本質が宿っている。
シャンパンの名は「クリュッグ」 シャンパーニュ/フランス