明け方、ふと眼を覚ます。隣で眠る、僕の美しい人の寝息だけが微かに聞こえる。僕は、彼女の額にそっと唇をあてベッドを抜ける。リビングのカーテンの隙間から、朝が忍び込んでくるのが見える。飲み残したワインが甘ったるい香りを部屋の中に広げていく。僕はソファーに腰を下し、あさと夜の境目に身を置く。「何してるの?」彼女がベッドから僕を呼ぶ。「こっち、いらっしゃいよ」僕はソファーから腰を上げベッドへと戻る。もう少しだけ、朝が来ない事を祈って。


ワインの名は「バタール03 クエルチャベッラ」トスカーナ/イタリア