No. 1,146 こころのメモ895(ACアダルトチルドレン札幌

132/365 【心的外傷と回復】恐怖〜これまでの纏め



こんにちは村上です。
ジュディス・L・ハーマンの『心的外傷と回復』から一部抜粋して話しています。
本書は、戦争で受けた心の傷と、レイプや虐待で受けた心の傷は、同質のものであり、回復にはPTSDへの理解や、専門的な治療、セルフケアが必要で重要であると説明しています。
少しでも生きづらさが楽になるようなヒントになればと思います。
昨日までの4回分の投稿をまとめてみます。



心的外傷と回復
p.46 第二章 恐怖

 心的外傷とは権力を持たない者が苦しむものである。外傷を受ける時点においては、被害者は圧倒的な外力によって無力化、孤立無援化されている。外力が自然の力である時、これは災害である。外力が自分以外の人間の力である時、これを残虐行為という。通常のケア・システムは、自分は自分をコントロールでき、人とつながりを持て、自分がいることには意味があるという感覚を人々に与えるものであるが、外傷的な事件はこのケア・システムでは及ばない力を持っている。


自分が受けた体験に、
どのような意味付けをするのかは
個人の自由でもありますし、
イニシアチブを自分に取り戻すといった
感覚を知り意識に定着させて、
「心」「精神」に備えることが、
自分軸とよばれる柔軟さをもった
生き方につながるように私は考えます。
しかし、

心的外傷を被った体験をもっている人は、
心や精神へのアプローチが、
自分軸を養うアプローチとは
経路が違うように思います。

この冒頭の記述は、端的に心的外傷を
定義付けしていて
社会・政治という大枠のなかにあるはずの、
家庭などの密室
(及び戦場という非日常のような現実も)が
パラドキシカルな意味合いも含んでいるようで、

被害者という弱者が
社会から排除され
声を上げられないなか
それでも社会という大枠のなかで
生きざるを得ない苦しみがあるという、
歪まされた力動があるようにも私は感じます。




p47  1行目

 外傷的事件が正常範囲を逸脱しているのは、決してそれが稀にしか起こらないからではない。それは人間の人生への通常の適応行動をめちゃめちゃにしてしまうからである。ふつうの不幸とはちがって、外傷的な事件は生命を脅かし、身体の統一性を脅かす。それは暴力と死とに直接に個人が遭遇することである。それは人間を極限の孤立無援感と恐怖とに直面させ、破局反応を起こさせる。現行の『精神医学教科書』によれば、心的外傷の共通分母は「強烈な恐怖、孤立無援感、自己統制力の喪失、完全な自己消滅の脅威」である2。


カウンセリング場面では、
胸が張り裂けそうな、
心がちぎれてしまいそうな
体験を話されるときがあります。

本文にある
「外傷的事件が正常範囲を逸脱しているのは、決してそれが稀にしか起こらないからではない。それは人間の人生への通常の適応行動をめちゃめちゃにしてしまうからである。」という見解からもわかる通り、

心や身体に傷を“負わされた“人の
日常生活がめちゃめちゃになるように、
「強烈な恐怖、孤立無援感、自己統制力の喪失、完全な自己消滅の脅威」によって、
なんでもない行為ができなかったり、
フラッシュバックが突然蘇ることで
フリーズしたり
パニックになったりすると考えられます。

つまり自分をコントロールできなくなる
突然の衝撃・驚愕が、
日常にあるという恐怖かと思われますし、
そのような混乱時に
誰も助けてくれないという
孤立無援の絶望が
「いつも」あるということかと思われます。




p47  7行目

 外傷的事件の強度を単一の物差しで測ることはできない。心的外傷を定量化しようとする単純な頭の努力は恐怖と恐怖とを比べ合うというナンセンスしか生まなかった。もっとも、目安となる体験はいくつかあって、それがあると心の傷を受けた確率が高いとみてよい。いくつかを挙げれば、恐怖に圧倒されるとか、出口のないワナのような状況に陥れられるとか、消耗の極致までさらされるとかである3。受傷の確率はまた、外傷的事件の中に物理的侵入、物理的傷害、極度の暴力的状況への曝露、見るに耐えない死にざまを目撃するということがあると増大する4。どの場合にも、心的外傷のもっとも突出した特性は恐怖と孤立無援感とを起こさせるその力である。


外傷的事件の強度というのは、
弱者(子どもや女性といった腕力で男性より劣る人)が強者から暴力によって
精神的・身体的に受ける
ダメージのことを言います。

恐怖は、
いつ何時襲ってくるのかわからない
予測不能さからも生じますし、
注目したいのは、
家庭という密室で日常的に弱者は
強者からの被害を受け、
自尊心は恥に晒され、
家庭内で起こることは
他言してはならないと脅されて、
秘密にするように強要されることで、
世間から切り離されたような絶望や
孤立無援感があるように思われます。

助けを求めることはできず、
暴力を受け続けることで
考え方や物事を捉える感覚が
歪んでしまう可能性もあります
(わたしがオカシイから酷いことをされるのだ、わたしに価値がないから大事にされないのだ等)。

強者とは主に男性を指しますが、
稀に女性であるケースもあります。
昭和の時代では、躾という名の
行き過ぎた折檻もあり、
信じられないような虐待が
祖母〜母〜姉といった間柄でも
行われたこともあり、対象は幼い男子や
病気に臥せている祖父〜父〜兄弟という場合もあります。

必ずしも腕力に頼らずとも 虐待は可能なのかと戦慄する話を伺うところではあります。 悲惨な体験にボクも思い出しては
眠れなくなったり食欲が失せたりしますから、
当事者の方のお気持ちとしてはどうなっているのか想像を絶します。




p.47  14行目

 危険に対する人間の通常の反応は、心身両面を包含する反応が、複雑でありつつ統一されて一つのシステムを形づくっている。脅威をみとめると、まず交感神経系が賦活され、危険に遭遇した人間はアドレナリンの高鳴りを覚え、警戒待機状態(アラート状態)に入る。脅威はまた、直面している状況だけに注意を集中させる。さらに、脅威があると通常の知覚に変更が起こる。危険に遭遇した人間はしばしば飢えや渇き、さらには痛みさえも無視して顧みなくなる。最後に、脅威は怒りという強烈な感情を起こさせる。この二つの感情は覚醒度を変え、注意力を変え、感情を変えるが、これは正常な適応反応である。この反応によって、脅威を感じた人間を断乎たる行動に向かって動員するのである。闘争しようとするか逃走しようとするか、どちらにしても ━︎━︎━︎━︎。p48 3行目まで抜粋


この説明は、
一般的なヒトの危険に遭遇したときの
緊張から闘争するか逃走するか
フリーズするかの反応を示しています。

ここで考えたいのは、
このような反応を
家庭という一般には安全で心休まるはずの、
自分の居場所で
日常的に危険に直面して
緊張から恐怖し、
理不尽な暴力の被害を被り、
泣き寝入りするような
生活をしていたのだとしたら、
その人の精神や身体は
一体どんな影響を受けるのでしょうか?




p.48  4行目

 外傷的反応が起こるのは行動が無益な時である。抵抗も逃走も可能でない時には、人間の自己防衛システムは圧倒され、解体に向かう。危険に対する通常の反応を構成するものはいずれも、その有用性を失いながら、現実の危険が去った後でも長期間持続する。それも正常とは違った、激しすぎる状態が続くのである。外傷的事件は通常の生理学的な覚醒度や感情や認知や記憶に深く長く続く変化を起こさせる。さらに、外傷的事件は正常な場合にはよく統合されている防衛機能をばらばらに働くようにしてしまう。外傷をこうむった人は、強烈な感情を自覚しているのに事件の記憶が明確でないとか、逆に細部に至るまで克明に記憶しているのに感情が動かないとか、いつも緊張し警戒し焦慮しているが、どうしてなのかわからないとかである。外傷症状はその発生源との関係が切れてしまう傾向がある。症状は独り歩きをしはじめる。


「外傷的反応が起こるのは行動が無益な時」というのは、
強者に圧倒され抵抗してもムダとか、
よしんば抵抗できたとしても 報復が恐ろしいと予感させることで
無力化されるということです。

子どもの頃に親から暴力を受け続けることで
自尊心は潰されて卑屈になり、
脳機能も障害を被ったり
発達できなかったりする報告もあります。

また次の記述は
心的外傷の恐ろしさを伝える
戦慄さがあるように思います。

「外傷をこうむった人は、強烈な感情を自覚しているのに事件の記憶が明確でないとか、逆に細部に至るまで克明に記憶しているのに感情が動かないとか、いつも緊張し警戒し焦慮しているが、どうしてなのかわからないとかである。外傷症状はその発生源との関係が切れてしまう傾向がある。症状は独り歩きをしはじめる。」

外傷という心と身体に
深い傷を負わされたことで、
極端から極端に“勝手に”振り切れてしまい、

自分ではコントロールできなくなる状態が
それこそ緊張をもって表現されているようです。

抑えきれない圧倒的な感情で
いっぱいになりながらも
その原因となる体験は思い出せないという
不条理があったり、

まるでモニタリングしているかのような
悲惨な状況を
ハッキリと思い出せるのに
感情はゼロだったりと、
混乱し自分のこと自体が理解不能になり、
生きた心地がしない日々なのかもしれません。

『症状は独り歩きをしはじめる』という
不可思議でありながら
妙にリアリティのある擬人化に、
納得せざるを得ないような
気になるくらいの話を聞いています。
クライエントひとりひとりの顔が思い出されます。




p.48  13行目

 このような断片化は、外傷が、ふつうはまとまって働く精妙な自己防衛システムを切り裂いてバラバラにするからである、外傷後ストレス障害に対する観察は歴史的にこれを中心としてきた。一世紀前、ジャネはヒステリーの病理の本質が「解離dissociation」であることを正確に同定している。ヒステリー者たちは彼女らを圧倒した事件の記憶を(意識に)統合する能力を失った人たちであるとされた。催眠術をはじめとする周到な研究技法を用いて、ジャネは外傷的記憶が通常の意識からは切り離されて一種の異常状態において保存されていることを証明した。ジャネは記憶と知識と感情との正常な結びつきが切り離されてしまうのは外傷的事件に対する激烈な感情反応の結果であると考えた。彼は「強烈な感情の持つ"dissolving"(溶融)作用」と言っている。これが心の「統合的synthesizing」機能を無力化してしまうのである5。


「断片化」は、
あまりにも大き過ぎるショック体験により、
心的外傷を負った人は、
通常の心の処理能力が
破壊されると言っています。

記憶と感情が分断されてしまい、
感覚はバランスを取れず、
感情はあたかもバラバラとなり、
心が働かなくなることで、
生きていくこと自体が
困難になると考えられます。




p.49  16行目

 外傷後ストレス障害の多数の症状を三つのカテゴリーに分けることができる。三つとは「過覚醒 ━︎━︎━︎━︎ hyperarousal」「侵入 ━︎━︎━︎━︎ intrusion」「狹窄 ━︎━︎━︎━︎ constriction」である。「過覚醒」は長期間にわたって危険に備えていたことを反映し、「侵入」は心的外傷を受けた刹那の消えない刻印を反映し、「狹窄」は屈伏による無感覚反応を反映している。


明日は、過覚醒について見ていきたいと思います。

あなたの苦しみが少しでも癒され
明日への希望が灯されますように




2.N.C.Andreasen,“Posttraumatic Stress Disorder,"in Comprehensive Textbook of Psychiatry,4th ed.,ed.H.I.Kaplan and B.J.Sadock(Baltimore:Williams&Wilkins,1985),918-24.
3.B.L.Green,J.D.Lindy,M.C.Grace et al.,"Buffalo Creek Survivors in the Second Decade:Stability of Stress Symptoms,"American Journal of Orthopsychiatry 60(1990):43-54.
4.B.Green,J.Lindy,and M.Grace,"Posttraumatic Stress Disorder:Toward DSM-Ⅳ,"Journal of Nervous and Mental Disease 173(1985):406-11.
5.P.Janet,L'Automatisme Psychologique(Paris:Fe'lix Alcan,1889),457.ジャネの心的外傷論の展望と要約は ━︎━︎━︎━︎ B.A.van der Kolk and O. van der Hart,"Pierre Janet and the Breakdown of Adaptation in Psychological Trauma," American Journal of Psychiatry 146(1989):1530-40.



みすず書房ホームページ


※当記事の参照元
心的外傷と回復 ジュディス・L・ハーマン 著 中井久夫 訳 小西聖子 解説/1998年9月10日 第10刷発行/みすず書房/400ページ/6,600円+税




担当心理カウンセラー
村上なおと

カウンセリングサロン Anela
札幌市中央区北3条西18丁目2-11 ブランノワールW18.exe 301号
・地下鉄東西線の西18丁目駅より徒歩8分


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ありがとうございます(^人^)感謝♪︎
 










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