このメモは、1993年、私がジャカルタの地下鉄を提案したときのものです。

当時は、スハルト大統領の時代でした。

 

インドネシア科学技術応用評価庁のB.J. ハビビ大臣の下で私たちは、働いていましたが、毎年、交通事情が悪化する首都ジャカルタの交通システムをどうするのかで、議論が絶えなかったのです。

 

現地の色々な方に話を聞くと、地下鉄建設に反対する人は、一人もいなかったのです。

しかし、運用後の地下鉄の運賃価格を議論し始めると、論争が終わらないのです。

 

当時は、1ドルが、Rp.1,800~2,000でしたが、現地で使われている人力車:バチャを前提とすると、300Rp.(ルピア)になり、冷房の効いた通勤バスであれば、1,200Rp.です。

 

地下鉄料金として、1,200Rp.とすると、貧困層の人たちは、乗れなくなり、乗車客数が激減するだろう。それなら、何のための地下鉄建設か?との意見が出てきます。

 

そこで、私は、運賃価格を細かく、議論しない提案をしました。

それが、この図で、縦軸は、全収益、横軸に乗車賃を示しています。

 

現実の乗車賃をいくらにすべきか、現状では、良く分からない。

 

しかし、地下鉄全体としての収益を最大化するというのが、概念で、図のOptimum Fare Level の領域です。

 

写真の説明はありません。

 

概要路線図は、当時ありましたが、詳細設計から建設を始めても、最低でも数年、かかります。

 

その間のインフレは、インドネシアの政治は、経済は?

政治家を初め、関係政府機関、首都、住民、企業など、全ての関係者が、合意するには、未知の要素が、多すぎるのです。

 

地下鉄建設は、日本が有するたいへんな技術が使え、それは、巨大な円柱形の掘削機を地下に沈めて、地盤によりますが、毎日3~8mを掘削しながら、進んでいくものです。

 

この図では、関係機関・関係者の全てが、地下鉄を欲しいのですから、価格は、地下鉄の収益(客数x運賃)が最大化するところで選ぶ提案をしています。

 

(ジャカルタ地下鉄公社:MRTJが設立され、2013年から6年近くをかけ、開業したのは、2019年3月。価格は、Rp.14.000(約110円)でした。)

 

そのように収入を最大化することで、PFI(Private Finance Initiative)のように毎年の補助金(公的サービス補助金)を最低化するポイントを選ぶというものです。

 

インドネシア経済にとっては、円通貨を借りる円借款は、返済が必要ですが、通貨制度と簿記の観点から、現地通貨での政府の債務は、本質的な問題ではないのです。

 

インドネシアの経済が、過度なインフレにならない程度に、政府は、予算化をすれば良いのです。

 

問題は、地下鉄建設をする技術、労力、機械類があるかどうかということだけです。

 

結果、建設工事を担当したのは、日系企業となりましたが、その計画の中、多くの現地の技術者が、経験を積み、労力を提供し、自分達の収入になれば、経済的にも良い影響が得られます。

 

首都の異常な交通渋滞を解決する一手段として、地下鉄建設は、民間主導のBOT(Build-Operate-Transfer)で実施するにしても、政府が経済的なバックアップ役として財政支援できることを前提として、実施すれば良いのです。