言葉の力 | 海を愛する組織開発・人事・教育・総務コンサルタントのブログ

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以前、ある企業のグローバル化教育プログラムを構築した時のこと。
私は、「語学研修」と「異文化研修」という大きな柱の他に、「論理思考研修」なる3つめの柱を入れて教育体系を作った。

通常であれば、「語学研修」と「異文化研修」の2つを軸にして、その企業にあった教育プログラムを作りこむ。

無論、英会話研修ひとつとっても、1クラスあたりの適正人数や1回の授業時間、また1週間あたりの授業の回数など、効率的に受講生の能力を伸ばすためのノウハウがある。

そして、その企業の教育予算やどの国へどのように進出するかによっても、会話研修とライティング研修のバランスをどうするかなど、細かく企業に合わせたプログラム体系を作る。

そしてまた、もうひとつの柱である「異文化研修」をどういった内容で、どのタイミングで開催するのかも、企業の様々な条件に合わせて考える必要がある。

このようにして、語学研修と異文化研修の2つを軸に作りこむのが一般的なのだ。


では、なぜ冒頭のように「論理思考研修」を入れたのか?

少し細く説明すると、この「論理思考研修」というカテゴリは、よくある「ロジカルシンキング研修」単体のことではなく、「プレゼンテーション」「ミーティングスキル」「ネゴシエーション」といった研修を通じて“相手に論理的に物事を伝える力を養う”研修体系のことである。


実は、その企業の幹部を含め何人かとメールのやり取りをする中で気づいたことがあったのだ。

メールのやり取りは日本語なのだが、何を言っているのかわからないメールが幾つか見受けられたのだ。

メールを読んで意味が分からない。

そこで、電話をかけて
「メールを頂きありがとうございます。ところで、先ほどのメールですが・・」
と何が言いたかったのか質問をすることが何度かあった。

私は思った。

もし、こういった文を書く方が、たとえ英単語を多く知っていたとしても、中国語単語を多く知っていたとしても、もっと言えば英語や中国語を話すことができたとしても・・
“相手に伝わらない”だろう。
相手を説得したり、タフな交渉をしたりすることは難しいだろう。

まずは(日本語でいいから)、言いたいことを相手にしっかり伝える能力が必要なのだ。

そこで、冒頭企業の(教育を担当されていた)総務部長や役員にその旨を伝えて、「語学研修」「異文化研修」に「論理思考研修」を加えた3本柱で教育を立ち上げたというわけだ。


まさに、そんなことを思い出させてくれた1冊が
「言葉の力」猪瀬直樹 著 中央公論新社
であった。

言葉の力 -   「作家の視点」で国をつくる (中公新書ラクレ)
猪瀬 直樹
中央公論新社
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私は、東京都が「言葉の力再生プロジェクト」というものを始めるという報道は耳にしていたものの、その中身は知らなかった。

正直、作家としての作品や政治的な成果は別として、会見ではいつも一言多く、敢えて相手を不快にするような発言の多い石原慎太郎都知事が「言葉の力」を論じることに何となく抵抗感を覚え興味が持てなかったのだ。
(私は都知事を知的レベルの高いアスペルガー症候群では?と思っているし、その発言にいちいち腹は立てないが。)

この本を読んで、著者が言葉の力(言語技術)なくしては世界で通用する人間を育成することができないこと、ひいては日本という国が世界から取り残されてしまうことを真剣に考えていることがわかった。

そしてアプローチとしては、著者の豊富な経験・ノウハウに加え、EU加盟後のフィンランドの教育改革やドイツの国語教育、日本サッカー協会での論理的思考への取り組みなど多方面から言語教育の重要性について説いているので説得力があった。

また、ただのアジテーションの論理構成の検証や小泉純一郎の言葉に感動が伴った理由を分析するなど、知的に面白かった。


さて、前後の内容を記述しないと意味は伝わらないと思うが、
私の印象に残った、興味深かった言葉をあげると、

・日本とヨーロッパのサッカーの実力差は、言語技術の差でもある。

・感性とはすなわち論理なのだ、ということは言語技術の要諦なのである。

・思考回路は文体に表れる。
ぐさりと突き刺さるような言葉、知的に握力がある言葉と呼ぼうか。

・擬音、流行語、あるいは無駄な形容詞は使わない方がいい。
 いらないものはそぎ落とす。

・(読み聞かせの効果で)読み聞かせをすると、子供は脳幹をつつむ辺縁系(情動・本能)という部分が反応し、母親は前頭前野が活発に反応する。



実際に本著を読んでみないと、意味が分からないとは思うが、
これらは、本に書かれていること以上に私の冒頭に書いた経験をはじめ、身の回りのことなどいろいろと気づきや思いがめぐらされて、非常に脳に刺激ある読書体験をさせてくれた、そんな1冊だった。