前回に引き続き、花王株式会社からトピックを頂きます。
今回のテーマは「マイスター制度」
マイスター制度が出てきたのは少し前になります。
段階の世代が一斉に退職をすることで発生するであろう問題の総称「2007年問題」というのがありました。
特に製造業では、製造現場力の低下、特に職人的作業における技術・技能がなくなるのではという危機感を持っていました。
その頃、若い世代へ積極的に技術・技能を伝承する取り組みのひとつとして「マイスター制度」が積極的に導入されました。
これは技能士、技能指導者、卓越技能者などと呼ばれる熟練工を「マイスター」として会社が認定し、彼らが若手に技能を伝承することを目的としたものです。
これは、技能が社内に残るだけでなく、育成体系の構築、現場リーダーの育成といった具合に相乗効果を期待することもできるものです。
そしてまた、この制度は複線型人事制度の一環としての効果も期待できます。
つまり、人や組織のマネジメントには向かないけれど、技術は高いものを持っている現場の人、いわゆる職人気質な人を処遇することができるのです。
現場オペレーターの目標となる社員、立場を作ることで、彼らのモチベーション策のひとつになるというわけです。
先日、見学させて頂いた花王の東京工場には各部門に1名マイスターがいらっしゃいます。
そして、それぞれが1人ずつ弟子を持っていて、技術を伝承しています。
化粧品という人の肌に付けるものの最後の品質は、やはり職人の技術によるところがあるそうです。
マイスター制度は、制度の名前こそ違え、いろいろな会社で導入しています。
アサヒビール、戸田建設、東京電力、東芝、トヨタ、セイコーエプソン、三菱重工業・・などなど。
この制度の導入のポイントのひとつは「納得性」です。
導入当初は、役員の面接や現場からの推薦でマイスターを決める会社が多いです。
彼らには一時金や手当ての支給、制服へのマイスターを表すラインの追加などで処遇するわけですが、どうしてその人が選ばれた(あるいは解任された)のかという根拠に納得性・公平性がなければ、現場の士気に影響してしまいます。
そこで、社内技能検定を導入する会社が多いわけです。
ところが、もともと人事などの制度企画側には技能・技術のどこが卓越しているのか、具体的かつ定量的に把握するのが難しいところがあります。
では、どうしたらいいでしょう?
私は、2つのことをヒントとして書きたいと思います。
(1)マイスターに聞く。
社内認定制度の構築・整備をするにあたり、制度企画側が主導するものの、マイスターに聞くことです。
最後の最後の官能的な技術以外は定量化できるはずです。
じっくりとマイスターにヒアリングして、それを人事などの制度企画側が言語化、体系化していくようにしましょう。最初はパワーが必要ですが、重要な仕事です。
(2)可能な限り定量化する。
とはいえ、社内検定の中身を定量化するのが難しいと思います。
これには、定量化できないものはほぼないという意識で、現場の技術員の力を借りながら進めていくしかありません。
私は、流通(GMS・スーパー)の非正規社員の社内審査システムがヒントになるのでは?と思っています。
いわゆる出世コースとは別で、現場のモチベーションを高め組織力を強めるということでは、非正規社員が現場の戦力の大半を構成している流通業(GMS・スーパー)のマネジメント、特に非正規社員の社内認定制度がヒントになると思います。
例えば私が以前話を聞いたあるスーパーでは、鮮魚の担当者の受ける社内認定試験は、何枚切っても刺身の厚みが〇mm~△mmに収まる、切り身の盛り付け角度が〇度以上~△度未満、どことどこを結んだ線の角度が〇度といったように、驚くほど細かく定量化されています。
つまり、感覚的な「見た目に美味しい刺身の盛り合わせ」でさえ、見事に数字化されているのです。
そしてそれが、社員のランクごとに見事に体系化されていました。
機械でも測定できない最後の最後の官能的な部分以外は定量評価ができると信じ、マイスターや技術員の力を借りながら、認定試験の納得性を高めることが大切です。
日本には小さな町工場でも、世界的レベルの技術を持っているところがあります。
その技術が後継者不足によって、存続の危機となっているそうです。
小さな工場だから、中小企業だからと諦めず、伝承の道を探りましょう。
その努力が、技術の日本復活に向けての一歩と信じて。