タイトルからしてメルヘンチックな香りが漂ってくる、約束のネバーランド。
冒頭からページをペラペラとめくってみると、孤児院の風景がほのぼのと描写されている。
主役らしき子供は、エマ・レイ・ノーマン、年長、つまり12歳の三人。
この三人を軸としてさぞほのぼのな光景が続く、連載している雑誌には珍しい優しい雰囲気物の作品だなぁ、とボーッとそんな事を考えていた。
だが、テストのシーンで「おや?」となる。なんだか子供達の目が尋常では無い。
孤児院でテストと言うのも妙だが…まぁ、それは社会に出てからの為と判断して、自分は余り気にせずに話を進めた。
そして、里親が見つかれば当然子供達は出て行くのだが、今回出て行った少女、コニーがいつも傍らにあるヌイグルミを忘れて行ってしまう。
エマとノーマンはそれを届けに行こうと画策する、と、ここまで読んでもまだハウス名作劇場のような牧歌的な雰囲気は崩れない。
孤児院を出て行く車両に追いついて見るが、無人であり、車の中には誰もいない。
読者的にはイヤな予感がした。車がなんだか凄く物々しい雰囲気と言うか、戦地で使うようなトラックと言うか、いかにも「ヤバい物を運んでます」って感じの車両だったから。
車内にいなかったコニーはどこにいるのかと、荷台を確認すると――コニーの無残な死体に出くわすのだ。
エマは茫然とするばかりだったが、読んでいる方は「何で!?」となる事請け合いだ。
普通最初のノリから見れば、ほのぼの作品だって思う訳ですよ。
ネバーランドはピーターパンのいた世界なんだから、子供達の楽園みたいな意味かと思えば、もっとヤバそうな世界で、いきなり年端もいかぬ少女の死体に出くわすとは想像の埒外である。
混乱する読者は、さらにヤバいシーンを見せられる。
慌てて隠れたエマとノーマンの目の前には「異形」としか言い様の無い怪物が現れ、やっぱり食べるなら人肉だよね、と物騒な会話を始めるのだ。
会話の相手は孤児院の先生であるイザベラであり、孤児院は人肉を育てる為の農場である事等、彼ら(?)は次々に暴露して行くのである。
孤児院の外に出た事が無いと子供達は言っていたが、それはもう管理社会(ディストピア)だ。
つまり、子供達は怪物達のエサとなる為に育てられている事がわかる。
ここでようやくストーリーと目的が提示された。生きる為に、孤児院を脱出する事だ。
既にデスゲーム物の作品のような様相だが、この感想はあながち間違ってはいないと思う。
「連載している雑誌には珍しい優しい雰囲気物」と言ったが、孤児院のテスト満点の三人が、力を合わせて怪物達の餌場から脱出する、と言う真逆の作品であった。
簡単に言えば「面白くなってきた」もうちょっとくだけた言い方をするなら「テンション上がってきた」。
恐ろしい事に、これは1話でしか無い。次の話からは孤児院のママであるイザベラとの騙し合いが発生する。
目がヤバすぎて逆に笑ってしまったが、子供達は難なくやりすごしつつ、脱出の方策を練る。
自分達がここは餌場だと気づいているとバレなければ何とかなると言う子供達は、イザベラの次の一手で己の未熟さを悟る。
子供達の世話をする人が増えるのだ。しかもイザベラに負けず劣らず、こちらは見た目も既に怪しいシスター・クローネだ。
当然、度々ヤバい表情を見せてくれるので、子供達には申し訳ないが、ぶっちゃけ笑えるし面白い。
一巻だけでこの有様なのだから、次の巻が気になって仕方無い。最後まで読んでしまったら、次の巻を買わねばと言う心理になる。
ヒキが尋常では無いのだ。
次巻の予告でシスター・クローネの顔芸をやたらと見せられるので、さらに笑える(普通は怖いのだろうが)。
ドラマ的にも面白いので、是非続きを読んでみようと思う。


