3巻は、いきなり緊張感のあるシーンから始まる。
年下組、ドンとギルダが隠し部屋へ侵入したシーンからだ。二人は里親の所へと貰われていったはずの子供達の遺品を見つけ、エマ達年長三人組の言葉が真実だと理解する。
隠し部屋へママがやって来るが、上手くやり過ごし、年長組と協力する事に――と、そうは問屋がおろさなかった。
いきなりエマ達に「何故隠していた、何故騙していた」と、怒りを露わにし、レイに鉄拳をブチ込む。
気持ちは分からんでも無いが、状況が状況だから仕方ないだろ、と思ってしまうのは、大人の目線からだからだろうか?
まあ、子供の立場からすれば「子供だからと言って何もやらせてもらえない」ってのは結構腹の立つ事なんだよね。
おそらくこの気持ちは大人なら覚えのある感情だろう。役に立たないからと言って、何も伝えてもらえないのは「相手にされていない」と勘違いしてしまう要素を孕んでいるから仕方ないね。
まあ、実際善意か悪意かはともかく、協力を頼める状況では無かった訳だし。何とか和解し、ママにも適当な報告を行うレイ、そして協力者となった新たな二人。
いつものように探索に行くと、出た出た。出ましたよ。シスター・クローネだ!
いやあ、相変わらず良い表情で、こちらまで笑顔になってしまうような素晴らしい笑顔だ。この顔芸だけでこの作品は充分に面白い(勿論ストーリーも面白い)。
こんなツラがいきなり1ページの大ゴマで出て来るのだから、期待するなと言うのが無理だ。
いきなりの登場で見てる人間を驚かすのは、ホラーやサスペンスの常道だが、顔芸を加えるだけで面白くなってしまうとは、さすがとしか言い様が無い。
顔の話はともかく、シスター・クローネは子供達に共闘を申し出る。自分は農園のママになりたい、子供達は外に出たい、お互いに協力すると言う取引だ。
エマ達は利害の一致、クローネをコントロールできると言う自信から共闘を受け入れるが、あっさり情報のやり取りで喋った以上の情報を読み取られてしまう。
顔芸の達人、シスター・クローネは腹芸の達人でもあったのだ。表情、態度、発汗などから情報を仕入れて行くクローネにさすがのエマ達もやや圧され気味だった。
さすがにエマ達三人が不利か、と読者が不安になった所で、一番警戒しなければならない、ママであるイザベラが動き出した。
シスター・クローネとの頭脳戦に何話か費やすかと思いきや、油断のならない展開だ。そして、同じタイミングで発信器を無効化する準備が整う。
もはや管理側と子供側、どちらの準備が先に済むかの問題だが、シスター・クローネは異動を言い渡されていた。
嫌な予感がする。この門は、コニーの死体が発見された場所でもあるのだ。つまりシスター・クローネはこの後どうなるか。
かなり良いキャラなので死んでほしくないが、何やら農園の管理側らしき人間が現・ママであるイザベラを今手放す訳にはいかぬと、クローネに告げてきた。
その後イゼベラと上の関係を悟り、怪物に捕らえられるクローネ。しかしクローネは子供達にヒントを残して来ていたのだ!
つまりもう、彼女は「死んでも悔いの無いキャラ」になってしまった。で、ページをめくると予想通りのシーンが来てかなりショックです。
(キャラ的に)良い人がお亡くなりになってしまった。クローネを上手い事始末し、後顧の憂いを無くしたイザベラは、続いて子供達の制御を取り戻す行動に移った。
探索中のエマとノーマンの前に現れ、ついに農園の餌場について解説を始めるイザベラ。エマは探索をノーマンに続けさせる為、イザベラに飛びかかるが――そこは大人と子供でしか無い。
しかも、嫌な擬音が出たな、と思ったら、イザベラは普通にエマの腕をへし折っていた。子供相手だと言うのに躊躇が無い。
彼女も上に使われる人間だから、ミスはまずいと言う事はわかるのだが、今まで手塩にかけて育てた子の腕をこうも簡単にへし折ったりできる物か。
…ああ、できるから子供達を「出荷」していたんですね。
写真や遺品などを大事に保管している所を見るに、一種の憐憫と言うか感慨のような物はありそうだったが、それはそれ、これはこれ、と言う事か。
益々目が離せなくなってきた所で、次巻へ続くと。文句無く面白いので、すぐにでも続きが読みたい。


