【京都】好日居 | ほっこり中国茶しませんか?

ほっこり中国茶しませんか?

英語と中国語を駆使しつつ美味しいお茶に巡り合う方法を模索しています。中国茶と、お茶にまつわる歴史が大好物です。

好日居2 
行きたいと思いつつ行けてなかった京都の中国茶茶館『好日居』さんに初めてお邪魔しました。初めてこのお店の存在を知ったのはAll Aboutの中国茶ガイド、平田公一さんの記事『京都の極上お茶処「好日居」へ』を拝読した時でした。

中国茶館といってもお店の経営方針は多種多様です。中華料理がメインで、ランチとディナーの間のみ一時的に中国茶カフェに用途変更するお店、スタバやドトールと同じように気楽に中国茶を味わえるファーストフード的なお店、中国茶の長く飲めるという特性を生かして?常連さんの憩いの場となっているお店、どのお店にも個性があり、常日頃はその違いを楽しんでいます。

不肖私、アラフォー女性ですが、この年齢になっても精神的にくたびれることがあります。悩みを抱えた時、10代、20代の頃は解決も簡単でした。友達に泣いて電話して思いのたけをぶつけたら、気持ちが晴れやかになって即解決。

しかし、40代の今は、悩みの中心は自分の事ではなく、身近な方々の人間関係の事になります。そしてそんな悩みは他言も出来ないので、自分で消化し私に何ができるのかを時間をかけて考えるしかありません。

そしてこの日も、もやもやとした悩みを抱えたまま、好日居さんに伺いました。

初めての好日居、期待が高まります

好日居は平安神宮にほど近い岡崎エリアにお店を構えています。東山を散歩するときによく通る所だったので、灯台下暗しでした。岡崎は建物の高さ制限がされているせいでしょうか、空が広くいつも日当たりがよく明るい印象のある土地柄です。

好日居3

 

京町屋の表玄関を抜けると、石造りの路地が現れます。門をくぐり、一歩踏み出すと空気の変化が感じられます。まるで門が結界になっていて、一歩足を踏み込むと別の世界に入り込んだよう。燦々と日のさす大通りから、ひんやりとした日陰の路地に入ると自分の内側に目を向けるような内省的な気持ちになります。

店内の雰囲気は?

この日にお店にいらしたお客様の半数は一人で足を運ばれる男性客でした。こんなに男性比率が高い中国茶館も初めてです。そして、値段設定にも少し驚きます。私がこの日注文した雲南古樹紅茶は1500円、お菓子もつけるとなんと1800円!さすがに少したじろぎました。

しかし、しばらく腰を落ち着けてゆったりとお茶を楽しむうちに、この高めの値段設定とお店のポリシーによって、好日居の雰囲気が守られているんだなあということが分かってきました。

間接照明で照らされる店内は、間口の狭い町屋造りだけあって日中でもほの暗く、常連客とご店主の穏やかな話し声と、卓上にかけられた陶器のポットの中でお湯がふつふつと沸く音しか聞こえません。ただただ静かで心地いい時間。まるで深い洞穴のなかで身を寄せ合っているような、そんな親密な空気が流れます。

お茶のお味は?

この日私が注文したのは、雲南古樹紅茶。雲南省の山に自生する樹齢300年~400年の岩茶を天日干しで完全発酵させ紅茶にし、それを碾茶(お茶のかたまり)に加工したものだそうです。碾茶と言えばプーアール茶という固定観念があったので、紅茶でもあるんだと驚きました。

天日干しなので色にむらがあり、濃い茶色の茶葉や銀針に似た灰色の茶葉などが混ざっています。茶葉は一枚葉の大きな茶葉です。砕いていないからか、お湯をかける前の茶葉はそれほど香りがないなあという印象です。

どんなお茶ですかと伺ったところイギリス系の紅茶とは違い、何煎お湯を注いでもずーっと同じ味が続きますよとお答えいただきました。一煎目だけ入れていただいて、茶葉を拝見すると、紅葉したもみじのように内側から赤く発色していて、美しい佇まいの茶葉でした。

そして、紅茶とはいえそこはやはり岩茶の力強さ。体の内側から温めてくれ、じわじわと体温が上がるのが分かります。何度も何度も杯を重ねるごとに、心のバッテリーが充電されるようなそんな不思議な力を感じるお茶でした。その昔、茶葉が薬として扱われていたころのお茶は、きっとこんな味だったんだろうなあと茶の歴史に思いが至ります。

人間に戻るためのお茶

カウンターに座る男性客とご店主とが会話される声が聞こえてきました。

『人間に戻るためのお茶ってどれかな?』
『やっぱり雲南古樹茶だとおもいます。』

そうそう、そうなんです。いろんなものを抱えた大人がふらりと訪れて、自分たちより何倍も長く生きている大先輩の古樹のエネルギーをいただいて、そしてまた現実の世界に戻っていく、そういう非日常の場所として好日居は存在しているように感じました。

そして、悩みを抱えた迷える子羊である私もまた(子羊という年齢ではないですが(笑))、好日居に救われました。羊つながりというわけではありませんが、村上春樹氏の初期の作品である『羊をめぐる冒険』や『ダンス・ダンス・ダンス』に登場する『いるかホテル』(夜中にエレベーターに乗って暗闇を進むと羊男が現れる)の雰囲気と、この好日居の雰囲気も似ているような気がします。

<こちら側の世界>と<あちら側の世界>を繋ぐ秘密のトンネルのような、精神性を感じるお店でした。そして私も心穏やかに、足取り軽く春の京都を楽しみつつ帰宅することが出来ました。

 好日居 
住所    :京都市左京区岡崎円勝寺町91
電話    :075-761-5511
定休日   :月曜日、火曜
営業時間 :13:00~18:00
HP     :http://kojitsu-kyo.cocolog-nifty.com/