会社の最寄駅に着くとすでにホームは人で溢れていた。

オーケストラよりも臨場感あふれる音を私の耳が集音し現実味を呼び覚ます。

電光掲示板に目をやるといつもよりも二十分遅い電車の発車案内。

込み上げる気持ちを抑えられなかった時間。沼田さんには迷惑かけたなぁ。彼の声を聞いている途中で突然涙が滴った。

一筋。「あ、あれ?松永さんどうしたんですか」

「え」気持が

二筋。「す、すみません」頬を伝う。止められない。

沼田さんの口元が何か伝えようと動いているように見えるのが、にじむ瞳の向こう側。

自分に必死で沼田さんが何を言っていたのか覚えていない。

とにかく電車を下してくれた。

私をホームのベンチに導いて、ただハンカチを差し伸べて「よかったら」と一言。あとは隣に腰かけて泣いてる私よりも前のめり。

徐々に落ち着きを取り戻し「すみませんでした」というと、「いいえ」と奏でた。

ホームに電車到着のアナウンスが流れる。

彼が首をかしげてこっちを向いた「乗れますか?」

「はい」視界に彼の目線を感じながら頷く。

立ち上がり、電車に私を促して乗せると、「僕は用があるので、ここで」と言って扉が閉まり、彼とホームが離れていった。

気遣いが嬉しかった。また流れてきそうな一筋を握っていたハンカチで押し止めた。