朝起きて鏡を見た時だ。

「まいったな」舌打ちしながら呟いた。

昨日は何もせずに寝てしまった。最悪だ。瞼は腫れ、より眼下が弛み、鼻深溝から上唇にかけてぷっくらと膨らんでいる。

昨日あいつの前で泣いてしまい帰りが遅くなったせいだ。もちろん、家に帰って飲んだ缶ビールも一役かっているだろう。それにしても…「ひどい顔」声が震えた。

鏡の前で見つめているとまた、込み上げてくる。蛇口を回して水を顔にぶつけた。「しっかりしろ!」自分をたしなめるような怒声が響く。

目を見据え「よしっ!!」と、腹に力を入れて発すると時計をみた。


時刻は500を指している。

まだ出社までは時間がある。


洗面台から部屋に戻り、化粧水で肌を整え、特別な日しか使わないとっておきのパックの袋を開け、目に、顔に、いたわるようにフィットさせた。

程よく心地よい冷たさが浸みる。思わず「ふぅ」と声が漏れる。


部屋を見回せば、思い出してしまうあいつの事を考えないために、私のために。昨日散々壊された目をやすめる。




五分間。少しだけ。


髣髴とよみがえる思いを鎮めることだけを願った。