電車を乗り継いで20分。
ミツオは、一人暮らしをしているマンションの最寄り駅に着いた。いつも見慣れている風景を少し早めに歩いてマンションを目指す。
程なく歩くとミツオのマンション『Only you』が顔を出し、その大きく掲げられている文字がいつものように少し足取りを重くさせた。
マンションに着いて自分の部屋に駆け込むと、衣装ケースからドライ加工のスパッツとジャージを引っ張り出して着替えを済ませ、自転車チューブの替えやサンダル、着替えなど入れたショルダーバッグを肩から下げてヘルメットをかぶり、冷蔵庫からスポーツドリンクを取り出し、サイクリングシューズを履いて部屋を出た。
マンションの横には駐輪場があり、ミツオのロードタイプ自転車も置いてある。コイルロックを外し、フレーム部分につけたペットボトルゲージにスポーツドリンクを入れ砂浜に向けてペダルをこぎ出した。
強い風は追い風となってミツオのペダリングを軽くし、天気とは裏腹に気持ちの雲を流れさせ、晴れやかにしていくような感覚を味わいながら外路地を抜け国道を走り、海岸沿いに出た。
やがて目的の砂浜が迫ってきたが、ヨットらしいものは見当たらない。
チラッと時計を見てみると、お天気カメラの映像を見てから3時間がたとうとしていた。
「やっぱり気のせいだったかな」と短く呟き、速度を緩めて走行していると前方から来る一台のオシャレな小型トラックが目に入った。
通り過ぎ様に荷台部分を横目に見ると、どうにかして折りたたんでいるが映像で見たものが顔を覗かしている。
ミツオは「あっ!」っと声をあげ、急ブレーキ。バランスを崩すも、なんとかUターン。本能的に追いかける。
追いかけるはいいが、どうするつもりだ?と自問したが、追いついてから決めよう。と気持を固め、今は向かい風となっている強い風を浴びながらペダルを強くこぎ出した。