辺りが少し光ったかな。と、少し間が空いて空気を切り裂く音がした。全てを破壊しそうな光と音は地面に、辺りに、吸い込まれる。

今の私も一緒に吸い込んでくれたらどんなに楽だろう、と、半ばすがる気持ちで出てきたばかりの雑居ビルを眺めた。


家を出る時「天気が悪いし、雨が降るかもしれないから」と家内が傘を渡してくれて出勤し、勤続33年があと2日に迫った今日。


会社が倒産した。


退職金は少し出るが、大幅なカットはやむを得ない。

再就職先斡旋の話もなく、社長は「すべて自分の責任です。本当に申し訳ない」と、ただ頭を下げ、最後まで決して上げようとはしなっかった。


最近、資金繰りがうまく行っていないことは噂になっていたが、小規模・少人数で莫大な売り上げをあげていた社長の手腕は、数年前までテレビ・雑誌などでも取り上げられるほど有名だった。

社長は人望も厚く、率先してことを運ぶ。雇われの身でありながら、一緒に働ける事が心地よくもさえ感じさせる人だった。

そんな社長だからこそ、資金繰りの噂があっても大丈夫だろうと思っていた矢先の倒産だった。


雑居ビルを眺め、背景にもくもくとした曇り空が重なると、大小無数のナマコが会社を飲み込んでいくような錯覚を覚える。


また一つ、空気とともに私を切り裂くような音が鳴った。眩暈を起こしそうになる。


家内に渡された傘に支えられながら、もう一度ビルを一瞥し、あてもなく駅へ向かった。