「今日は洗濯物が乾かないわね」
そうつぶやくサエコの目に、朝早くから降り出した雨がよりいっそう激しさを増していく様が飛び込んでくる。
サエコは一般的な主婦のゴールデンコースを毎日歩む。
朝早くから、中学生になる反抗期息子と少し気弱な旦那への弁当&朝食の準備から始まり、洗濯機に洗濯物を放り込み、合間に、いつの間にかキレイに見せる技に磨きがかった掃除、一息ついて我が家の中で唯一サエコの味方の柴犬と散歩し、帰宅すると洗濯物を干す。
さっと新聞のチラシに目を通し、特売の商品がなくなって終わぬ内にスーパーへ駆け込む。買い物を終え帰宅すると手際よく買い集めた商品を直し、少し遅めの食事と終盤にさしかかったワイドショーを見る。という、サエコにとってはゴールデンコースと呼ぶにはほど遠い、灰色の道を。
激しさを増した雨に、サエコはあまり好きではない洗濯機の洗乾ボタンを押した。
雨に負けじといつものように技を見せ、私の味方と散歩に出るが、私の味方は雨に弱い。
いつものコースを少し歩けば、イヤよイヤよと踏ん張りながら首を振る。雨降りは私もイヤよ、と少し笑顔で踵を返し我が家に向かった。
大体200~300メートル歩いてきたが、だんだんと強くなる雨に帰り道を通せんぼされているような感覚を覚える。
視界は最悪だが、透明なビニール傘を透して少し見える前方から、自転車のロードレースでもしているような集団が向かってきてガードレールを挟んだ私の横を通りすぎていく、この雨の中大変ねと思い、通り過ぎていく横から「ガンバレー」と雨音にかき消されないように声をかけた。
その中の一人が私の方をちらっと振り向いた様な気がしたが、この雨の中でビニール傘とくれば、目はあまり利かない。
それでも少しは届けばいいなと思いながら、プールで歩行するように一歩一歩着実に我が家に向かった。