教授はゆっくりと話し始めた。。。
守るべきものは何なんだろう という話しなんだ。

キミにも、僕にも
守りたいというものがあるよね。
親と子どもがいたら、
親は子を守ろうとするだろう、
子も親を守ろうとするだろう。
こんなお話しだよ。
頻繁にリストカットを繰り返す女子学生がいた。
A 子さんとしよう。
授業中にもつい手首を切ってしまい、
出血が止まらずに医務室に行くこともしばしばあった。
リスカは、自己の存在感の確認とストレス解消が目的と言われるね。
A 子さんには多少難しいところがあって、
時々向精神薬を飲む必要もあり、
家で荒れ狂うこともあったようだ。
でもね、
成績は優秀だったので無事に卒業して、
希望の会社に就職した。
就職して数ヶ月後、
保護者から連絡を受けたんだ。
A 子さんが勤務中に薬物を飲んで仕事をしているという通報があって、
上司に呼ばれた。
とんでもない社員だと言うことで、クビになりそうだ。
もしクビになって家にいるようになったら、
以前のよう に荒れるかもしれない、
想像するだけでも困ってしまう。
ほぼ確実にクビになるみだいだ。
親としてどう対処したら良いでしょう、
二度と就職も出来ないかもしれない、
給料も入らなくなるし……
というような相談だった。

保護者に尋ねた。
仮に薬を飲んで勤務していたとして、
どのような薬物を飲んでいたのですか?
高血圧の人は降圧剤を飲むでしょうし、
臓器移植を受けていたら免疫抑制剤を飲むでしょう。
A 子さんはある種の向精神薬を必要とするから当然服薬するでしょう。
どんな事実があり
誰がその事実を上司に告げて
会社にとってどんな不都合が生じたというのですか?
保護者の方はA 子さんが会社をクビになり、
その後の自分たちとの生活状況を予測して
戦々恐々としているようでした。
僕は滅多に人を叱責したりはしない。
でもね、
このときは凄く腹が立ったんだ。
何か間違えていませんか、と強い調子でお尋ねしたよ

最初はおわかり頂けないようだった。
僕はたたみかけるように問いただした。
あなたたちが守らなければならないものは何ですか?
あなた方の平穏な生活ですか?
それとも、大事な娘さんですか?
会社ですか?
娘さんのこころですか?
保護者に限らず人はしばしば目先の状況にとらわれて慌てふためき、
本来守ってあげなければないものを見失ってしまう。
A 子さんを守れるのは、
ご両親しかいないんだよ。
あなた方が守るのは、
大事な娘さんじゃないんですか!!

何かを悟ってもらえたようでした
後日談は以下の通り。
A 子さんの業績を妬んだ同僚が、
A 子さんの飲んでいる薬をいわゆるドラッグと称して、
上司にA 子さんは勤務中にドラッグをやりながら運転をしたり、
お得意さん周りをしていて、
けしからんと誹謗中傷していたのだ。
それを真に受けて、
会社側は真実を調べることもなく
A 子さんを弾劾、解雇しようとしていたのだ。
一方
目覚めた保護者の方は、
告訴も辞さない態度で、
会社側に事実無根のいいがかりを撤回、謝罪するよう求め、
勝利を得たのだよ。
めでたしめでたし
一件落着なのだが、
いろいろな点で根深い問題をはらんでいるよ。
「会社は鬱病の人には傷病休暇を与えたり、
すごく篤い措置をとってくれる。
周りの人も理解する。
でも、私みたいなこころの障害は
誤解ばかりで全く理解してくれない」
という
A 子さんの言葉が忘れられない。

守るべきものを決して間違えてはいけない。
キミが守るべきものは何だ?