先日、商標権の移転登録のご依頼を頂きました。お恥ずかしながら、弊所では初めてのケースになります。
前の事務所では、当然に移転登録の仕事もやっていましたが、手続き自体は事務サイドのみで処理されるので、私はやったことがありませんでした。
やっぱり経験値ゼロというのは苦しいですね。もちろん最低限の法律の知識はありますが、どんな書類を作って、何に気を付ければいいか、いまいち分かりません。
まず、商標権移転登録申請書の様式をダウンロードし、見よう見まねで書いてみました。「登録権利者」とか「登録義務者」という表現になじみがなく(前者が譲受人で、後者が譲渡人です)、それを確認するのにも時間がかかりました。
また、原則として登録権利者と登録義務者の共同申請になりますので、双方から「委任状」を頂かなければいけません。登録権利者の単独申請は認められますが、登録義務者の「承諾書(単独申請承諾書)」が必要になるようです。あと、もちろん「譲渡証書」も作成して頂かなければいけません。
それらの様式も、弊所からお客さまにお渡しして記名・押印のみして頂くことになるので、ちょっと緊張します。あとで様式や記載事項が間違っていたことが分かって、再度記名・押印してもらうことになるとバツが悪いですからね。
さらに、今回は、中小企業のお客様が関連会社へ事業を移すのに伴っての商標権の移転で、譲渡人と譲受人(関連会社)の株式会社の代表者が同じでした。この場合に「有償」で譲渡すると利益相反行為に該当する可能性があるので、「取締役会の承認」又は「株主総会の決議」が必要となるようです。
これは、危うくスルーしてしまうところでした。今回は「無償譲渡」でしたので、譲渡証書に「無償にて」の文言を入れることでクリアしました。
※実際には、これではクリアできませんでした。無償譲渡の場合、登録権利者(譲受人)は問題ありませんが、登録義務者(譲渡人)にとっては利益相反行為に該当する可能性があるので、登録義務者の株主総会の議事録及び登記事項証明書が必要になるとのことです。ご注意ください。
最後に、登録免許税30000円分の「収入印紙」を商標権移転登録申請書に貼って、譲渡証書と委任状を添付して特許庁に提出します。
オンライン手続きはできない、特許印紙ではなく収入印紙、収入印紙に割印してはいけない、識別ラベルは使えない、なんて当たり前のことでも、いちいち確認しないと確信が持てませんでした。
あと、本件は、その後の管理を含めて中途受任をしたのですが、別途、代理人受任届を提出すべきなのか特許庁に確認したところ、委任状にその後の手続きについての委任事項が書いてあれば、そのまま代理人となるとのことでした。
ということで、何とか手続きをしました。不備があって手続却下されないことを祈るばかりです。
初めてのケースというのは苦労しますね。