今日は少し涼しいですね。今朝は(また水曜日に限って)早起きして仕事をしたのですが、オリンピック放送も日本選手の試合は終わっていて、結果を確認しただけだったので、集中することができました。



さて、先日、ホームページ経由で、お客様が来所されました。


その方は、ある手作り商品を細々と売っているんですが、最近、同業と思われる方から作り方を聞かれることが多いようで、今は「企業秘密です」と答えているものの、何か保護する手段はないかという相談でした。


弊所に来られる前、県の相談窓口に行って相談したら、ひとまず最低限のことだけご自分で書いて特許出願して「特許出願(申請)中」という表示をしたらどうか、とアドバイスされたようです。ただ、最低限のことだけと言っても何を書いたら良いか分からないので、その部分をお願いしたいとのことでした。



ただ出すだけの特許出願なら話は早い!おそらく仕事をご依頼頂けるな、と思ったのも束の間...だんだん雲行きがあやしくなり、結局「現時点では何もしない」というアドバイスをして終わりました。



まず、その商品は少ないながらも売ってしまっています。さらに話を聞くと、ご自身のブログやホームページに写真を掲載してしまっています。ブログの記事は、もう2年半近く前でした。すなわち、「2年半前には公知になっている」ので新規性がないことは明らかで、新規性喪失の例外も受けることができません。


それでも、とりあえず特許出願だけならできます。でも、形式的に特許出願をして「特許出願(申請)中」を表示すれば、他社を本当に牽制できるか...今回の場合、私はNOと判断しました。


私が一番気にしたのは、公知になったのが「2年半前」である点です。



特許出願をして1年半を経過すると、その内容が公開特許公報に掲載され、誰でも見ることができます。逆に言うと、「特許出願(申請)中」の表示をした商品についての公開特許公報が見つからなければ(これは出願人等で検索すれば分かります)、特許出願をしてから未だ1年半が経過していないことが分かります。


「特許出願(申請)中」の表示をした商品が「2年半前」に公知になっていることを知っていれば、新規性がないことはバレバレで、そんな特許出願など恐れるに足りないことが明らかです。なので、他社への牽制効果は極めて限定的で、およそ実用新案と同じ程度だと考えれます。



であれば、必ず登録される実用新案を利用して消費者への宣伝効果を狙うという話に進みました。でも、いろいろ聞いていると、手作り商品だからそれほど数も出ないし、単価もそれほど高くないんです。決して安くない費用をかけて実用新案登録をしただけの宣伝効果が得られるかと言えば、現時点ではNOと判断せざるを得なかったです。


そのアイデアを真似されたくない気持ちも分かりますが、特許出願に使おうとしていたお金を、別の宣伝等に使って、その商品のニーズを掘り起こす(市場を広げる)努力をした方がいいのでは...というコメントにならざるを得ませんでした。


そして、将来的にはネット通販を開始する計画もあるとのことでしたので、それが現実に近づいたときにもう一度考えましょう、そして商品のグレードアップをしたときにそれをしっかり保護しましょう、とアドバイスをして終わりました。



結局1時間半ほど話をして仕事にはならなかったのですが、これがそのお客様にとって最善の選択だと私は思いますので、私自身はスッキリしています。私もいい勉強をさせて頂きました。