今日は日曜日、恒例(?)の弁理士試験ネタです。
何にしようか...ちょっと受験業界から離れてしまった私は、もう簡単にはネタが思いつかないのですが...手っ取り早いところで、特許法の29条と29条の2と39条における同一の違いでも取り上げようと思います。
29条1項各号には、公知・公用・文献公知発明は特許を受けることができない(口述試験ではこの表現では認められませんかね?)旨が規定されています。29条の2では、先願の明細書等に記載された発明は特許を受けることができない旨が規定されています。39条では、先願又は同日出願に係る発明は特許を受けることができない旨が規定されています。
要するに、本願発明が上記の引用発明と「同一」である場合、特許を受けることができません。
ただ、この「同一」の解釈は、各条文で微妙に違います。大前提として、本願発明の発明特定事項と引用発明の発明特定事項に相違点がなければ、当然に「同一」となりますが、それ以外に、以下の場合も「同一」と判断します。
◆29条1項各号
(1)本願発明が上位概念で引用発明が下位概念の場合
◆29条の2
(1)本願発明が上位概念で引用発明が下位概念の場合
(2)本願発明が、引用発明に周知・慣用技術を付加・削除・転換等したものであって、新たな効果を奏するものでない場合
◆39条
(1)本願発明が上位概念で引用発明が下位概念の場合
(2)本願発明が、引用発明に周知・慣用技術を付加・転換・削除したものであって、新たな効果を奏しない場合
(3)単なるカテゴリー表現上の差異である場合
結局、「同一」の範囲は、29条<29条の2<39条となります。
では、29条>29条の2>39条の順に拒絶されにくいということでしょうか?そうではなくて、私は、各条文での拒絶のされやすさは同じと思います。
4時間後に追記:(1)~(3)は、いずれにしても拒絶されるという趣旨でしたが、「拒絶のされやすさ」という意味では同じではありませんね。すなわち、(2)のケースは29条1項では拒絶されずに29条2項で拒絶されるので、
29条1項<29条の2=39条
ですし、 29条2項では(2)のケース以外にも拒絶される場合があるので、
29条1項&2項>29条の2=39条
となりますね。大変失礼しました。
例えば、(3)のケース(「物の製造装置」と「物の製造方法」など)は、当然に29条の2でも拒絶されると考えます。なぜなら、「物の製造装置」の発明が特許請求の範囲に記載されている場合、明細書には「物の製造方法」の発明も当然に記載されていると考えられるからです。これは29条でも同じです。
また、(2)のケースは29条1項各号では拒絶できないかもしれませんが、29条2項(進歩性不備)で拒絶されるケースと思います。
逆に言うと、29条の2の「同一」に(2)、39条の同一に(2)と(3)を含めないと、これらのケースを拒絶できなくなってしまいますね。だから、こういった違いがあるんだと思います。
立法者なり審査基準立案者が同じ考え方を持っていたかは定かではありませんが、少なくともこう考えると違いも覚えやすいのではないでしょうか。