このブログでは、弁理士試験の話題が少ない(というか論文ネタは書いたことがない)ですね。ということで、たまには論文の書き方について。
ちょっとマニアックな話なので、受験生以外にはつまらない話題になると思います。
受験生の皆さん、論文では、「事例を条文にあてはめて説明しろ」と教えられていると思います。それは皆さんが知っているはずなんですが、実際に受験生が書いた論文の答案を読むと、この本質を理解されている方が少ない(少なくとも実践できない方が多い)ことが分かります。例えば、こんな問題を想定してみましょう。
『甲は、部品Xの意匠イについての意匠権Dを有している。乙は、部品Xを用いた完成品Yを販売している。このとき、甲は、意匠権Dに基づき、乙が完成品Yを販売する行為を差し止めることができるか、説明せよ。』
ある程度勉強してきた方なら、パッとみて「利用」だなと思うはずです。そして、おそらく受験生の多くは、『差し止めとは…』とか『侵害とは…』とか定義を書き始めます。これはこれで書くべきか否かという議論もあるのですが、それは今日のところは置いておいて(気になる方はこちらのブログ
をご参考)、次に、「利用」の前段として「直接侵害の成立」の検討に移るはずです。どう書くでしょうか?
<パターン1>
XとYは部品と完成品の関係にあるから、直接侵害は成立しない(23条)。
<パターン2>
XとYは部品と完成品の関係にあり非類似物品であるから、直接侵害は成立しない(23条)。
<パターン3>
XとYは部品と完成品の関係にあり、その用途及び機能が異なる非類似物品であるから、直接侵害は成立しない(23条)。
<パターン4>
XとYは部品と完成品の関係にあり、その用途及び機能が異なる非類似物品である。すなわち、Yの意匠はXの意匠イと非類似であるから、直接侵害は成立しない(23条)。
全てのパターンで、結論は「直接侵害は成立しない」の結論が書かれていて、その理由として「XとYは部品と完成品の関係にある」ことも明示されており、根拠条文も書かれています。これらは決して間違っていません。
しかし、23条には、「意匠権者は、業として登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有する。」と記載されています。すなわち、23条に基づく侵害を否定する直接の根拠は、「実施意匠が登録意匠及びこれに類似する意匠ではない」こと、すなわち両意匠が非類似であることになります。
すなわち、これを明示して初めて「事例を条文にあてはめて説明」したことになるのであって、それができているのはパターン4だけになります。パターン1~3では、「23条」という根拠条文を持ち出した直接の根拠が全く示されておらず、根拠条文が他の部分の説明と乖離している状態です。
また、意匠の類否はその物品と形態から判断すること、物品の類否はその用途及び機能から判断すること、が審査基準に記載されていますので、それに沿って記載すべきと思います。パターン3であればその審査基準の理解が採点者に伝わります。パターン2は、前者のみしか伝わりません。パターン1は、条文や審査基準の理解が採点者に全く伝わらず、独自の見解をただ書いているだけにしか見えません。
なんとなく雰囲気は伝わったでしょうか?
なお、受験機関や先生によっては、「コンパクトに結論を書け」とか「根拠条文を書いておけば大丈夫」と教えているケースがあるようですが、それは「パターン1~3のような書き方で問題ない」という意味ではないと考えます。もしそういう意味だとしたら...これ以上は何も言いません。
受験生の皆さん、いろいろ情報が氾濫していて混乱すると思いますが、それを取捨選択するのも実力です。講座や答練会などで大変だと思いますが、頑張って下さいね!