2012年に関西所属の新人騎手としてデビューした中井くんと菱田くん。
名前が漢字も同じ裕二で1年間勝ち星を重ねてきた。

競馬学校の卒業式に参列してその縁もあって2人の家族とも親しく話をすることも多く今までの新人以上に格別の思い入れがあった。


最終週を残して2人の成績は
中井くん⇒21勝・2着24回
菱田くん⇒21勝・2着23回
ここまでほぼ互角の成績で関西新人リーディングは最終週の阪神開催3日間で決着することになった。


まずは22日。
この日は残念ながら2人とも連に絡むことができず成績はそのまま。


続く23日。
1Rで中井くんがテイエムナデシコ(10番人気)で勝って菱田くんがサンマルジュエリー(8番人気)で2着となってまずは中井くんが1歩リード。
2Rでは菱田くんがスズカアルファ(3番人気)で2着に。
そして10RクリスマスCで菱田くんがサマールナ(7番人気)で勝利を飾った。

23日が終わった段階で
中井くん⇒22勝・2着24回
菱田くん⇒22勝・2着25回
と今度は菱田くんが2着の差で1歩前に出た。


そして24日を迎えた。
2人の熱い戦いもいよいよこの日が最終日。

中井くんも菱田くんも5鞍ずつ。
開門前に2人のお父さんと出会ってこの日も一緒に観戦することに。


まず2R。
中井くんは2番人気のニシノモンクスに騎乗するも残念ながら8着と敗れた。

6R。
キクノメテオ(5番人気)に騎乗した中井くんは果敢に先行して人気馬を抑えて見事に1着でゴール。
この段階で中井くんが再び抜け出した。


そして向かえた8R。
すでに中井くんは全騎乗を終えて23勝2着24回。
菱田くんが騎乗する馬はサウンドガガ。
単勝8番人気。

寒かったけどカメラもあるしせっかくだからとゴール前で観戦することにした。
すると隣に菱田くんのお父さんもやって来た。
「これが今年の最終レース。ここまで1年やってこられた。最後のレースをしっかりとこの目で見ておきたい」と。

だ「そうですね。これで泣いても笑っても最後ですもんね。先頭で抜けて来てくれるとうれしいですね」
父「牝馬で2kg軽いし減量分もあるんでなんとか来てくれたらと思ってるんやけどね」
だ「先行して粘り込めればおもしろいんじゃないですか?」
父「そうなってほしいなぁ」


いよいよスタートが切られた。

先行する2頭を見ながら3番手での追走。
先行2頭の1頭は貴志くん騎乗のコロカムイ。
それを見ながらボクの口からポロッと出てきた言葉はというと・・・。
「このレースは貴志くんより菱田くんの応援。貴志くん。直線でヨレて邪魔したらアカンで!」
するとお父さんも笑いながら
「貴志くん。まっすぐ走ってや!」と。
(実は菱田くんは競馬学校に1年残って今年デビューしたので貴志くんとは同期入学)


4コーナーを曲がってサウンドガガが力強く抜け出してくる。
ここからは2人して「ユウジ!ユウジ!」と声を張り上げ前の柵を叩いて懸命の応援。

サウンドガガが2着に3馬身差をつけて見事ゴール!

その瞬間2人で顔を見合わせハイタッチ。
そして固い握手。

口取りを見つめるお父さんはジワッと涙ぐんでらした。


レース後サインに応じている菱田くんに「おめでとう!」と声をかけると
「この勝利が今まで一番うれしい勝利になりました」と答えてくれた。

こうして関西新人リーディング争いは最後の騎乗を勝利で飾った23勝2着25回となった菱田くんの手に。


そしてその夜。
菱田くんのお父さんから「最終回。逆転満塁本塁打のような劇的勝利の瞬間を共に喜んでいただきありがとうございました」と。


とてもドラマチックな3日間。
しかもそれを2人のお父さんと一緒に観戦できたという幸運。
今まで何年も競馬を見てきた中でも濃密な時間だった。