さて、色々あって音楽を聴くこと自体が難しい時期で、こちらは2020年12月リリースの松任谷由実さんの、現時点で最新アルバム「深海の街」、ユーミン自身がプロモーションの中でも明言していましたがコロナ禍をテーマにした作品だそうで、流石というかなんというか、この訳分からない疫病と社会の混乱でアルバム制作に取り掛かろうというのはユーミンならでは、他のアーティストでもそういうことを表明した人はいるのかな、私は聞いたことがありません。


このコロナの一番大きな影響は飛沫感染防止のために人と人の接触に大きくブレーキをかけたこと、マスク・手洗い・パーティション・ソーシャルディスタンス、コンサート等のイベントも中止や延期・人数制限、基礎疾患を持つ人や高齢者への感染回避をと強調されて移動や年末年始の帰省、施設にいる親への面会もできない等、影響が広がり続けました。


このアルバムでも冒頭「1920」がその感が強いですね、オリンピックとかギャラリーのいない試合会場なんてワードも出てくるし思い浮かぶ映像は何か作りだけは立派なスポーツ施設でガラーンとした無観客の座席、みたいな、このコロナ禍で実際に出現した、おそらく騒動が治ったら見られなくなる今だけの特異な状況、それを、今のシリアスな状況を記録しておかないとと、それはもしかしたら批判を受ける可能性も含めてアーティスティックなチャレンジだと思うし、アルバムタイトル「深海の街」もこのジャケットも良いですねぇ、宇宙服の様なものを纏って、それでも人は切実に求め合うというのをよく表現してます。


2曲目「ノートルダム」からはコロナからは離れていつものユーミンワールドに戻って、聴いてて安心感がある、ドラマ主題歌「知らないどうし」やシチューのCMソング「雪の道しるべ」等、TVで見聞きした曲が入っていて、最後のタイトルチューンも聴いてて心地良い、夜の街を空中浮遊して飛んでいく様な気がします。


ユーミンの声の、これは老化?なのか分かりませんけどレコーディングしてこれが一番良いテイクだったの?という気もしますがリアルな今のユーミンの生々しさということかな、それも含めて、まさに現在進行形の今、ということを濃厚に感じるアルバムの様に思います。