学校の歯科検診の結果、「虫歯あり・歯石付着」で歯医者行きを命じられてしまった我が家の自閉っ子コロ(小学3年、特別支援学級在籍)。

 

超絶に怖がりなコロ、生まれて初めての歯医者さんである。

不安が無い訳がない。いやむしろ、不安しかない。オエー

 

 

3つあった候補の中から、クラスメイトのしいちゃん(※仮名)が通っている歯医者さんに行くことを決めて、無事に予約が完了。

 

 

歯科に行く前、しいちゃんのママさん&同じくクラスメイトのけい君(※仮名)のママさんと話す機会があり、障害児の歯科通いの話でもちきりに。

 

けい君はネットでグルグル巻きにされて、頑張って乳歯を抜いたこと。

しいちゃんは、やっと歯医者さんに慣れて、自分で治療台に座れるようになったけど、最初は大泣きで大変だったこと。

しいちゃんの知り合いの自閉症のお子さんは、普段から歯磨きもさせてくれず、最終的には大学病院に入院して、全身麻酔で歯石取りと虫歯治療を一気にやったそうで…。

 

 

……みんな苦労してるよな。そりゃそうだよな。

それでも皆、頑張って歯医者さんに通ってるんだもんな、偉いよなぁ…!!

と胸が熱くなる私なのであった。

 

 

そして当日。

当然ながら行く前から、「ああああ、怖いなぁ!!嫌だなぁ!!!ガーン」を連発するコロ。

同じ言葉がグルグルとリフレインしすぎて、それを聞く母はバターになりそうであった。

 

 

しいちゃんママさんが紹介してくれた歯科は「石田歯科(※仮称)」というメチャメチャオーソドックスなネーミングの歯医者さんで、ホームページは無し。市役所のウェブサイトに電話番号と住所が掲載されており、電話も通じたから存在していることは間違いないが、詳細が分からぬ。

 

 

しかし!!

我々にはしいちゃんが付いている!!

 

しいちゃんは、診察台に座る練習から始めてもらい、実際にバキュームを触らせて貰ったりして、徹底的に恐怖を取り除く練習をしてから治療に臨んだそうだ。

今や、しいちゃんは石田歯科が大好きになり、自分1人で診察室に入って行き、ママさんは待合室で待っているだけというレベルまで到達しているらしい。

 

コロよりずっと体が小さなしいちゃんが、歯科通いの大大大先輩に見えるのは言うまでもない。しいちゃん、凄すぎる!!おねがいキラキラ

 

 

それに引きかえ。

家から出て、一歩足を出す度に「ああああ、怖いなぁ!!嫌だなぁ!!!」と不穏大爆発のコロ。

 

私は「大丈夫!!しいちゃんが行けるなら、キミも行ける!!なぜなら、コロもしいちゃんも同じ8月生まれだからだ!!同じ年の同じ月に生まれたんだもん、コロも大丈夫!!」と若干無理のある理由をこじつけて励まし続けた。

 

コロも「怖い!!嫌だ!!」を連発しつつも、10回に1回は「しいちゃんも行ったのかぁ~!!」と気を取り直し、どうにか歯医者さんの方向に足が向かって行った。

 

もはや、我々親子は「しいちゃん大権現様」にすがる民である。

 

 

コロを励ましつつ、どうにかグーグルマップを頼りに石田歯科へ到着。

 

 

……物凄く昭和ノスタルジーな雑居ビルに確かに「石田歯科」という看板が出ている。

薄っ暗くて、ボロボロで、エレベータもないビルだ。


入り口の階段の壁が何故か鏡張りになっており、それがますます不気味な感じを増大させている。

 

確か、しいちゃんのママさんが2階に石田歯科があると言っていたような気がしていたので、不気味なビルに恐怖を募らせるコロを励まし、階段を上る。

 

……しかし2階には「●●サービス株式会社」という古い扉しか存在せず。

2階の壁一面には、これまた昭和ノスタルジーカラーのオレンジ色のタイルがびっちり貼られており、薄暗いビルとのギャップが恐怖感を更に煽ってくる。

もはや、リアルお化け屋敷だ。

シーンとした無音の異空間。

ここに『笑ゥせぇるすまん』の喪黒福造が登場したら、私も絶叫して逃げるに違いない。

 

昼間でもこの暗さで、この不気味な感じ。夜になったら怖さ倍増だろうなぁ…と背筋が寒くなる。

 

それにしても……石田歯科がない???

 


恐がるコロに「お母さん、ちょっと3階を見てくるけど、コロも来る?」と言ったら、「嫌だぁぁぁ!!ここで待ってるぅぅぅ!!」と号泣。

(一人で待ってる方が怖くないのかな…滝汗というツッコミは心に留めた。)

 

 

更に薄暗さを増す3階への階段を上り、恐る恐る進むと、奥の古い扉に古い字体で「石田歯科」と書いてあるのが見えた。

 

大急ぎでコロの所へ戻り、「あった!!石田歯科あった!!この階段、しいちゃんも上ったんだよ!!」と、またまたしいちゃんの力を借りて、コロの手を強く握ってやり、1段1段上っていく。

 

この時点で、私のエネルギーの8割を使ってしまい、ヘトヘトである。チーン

 

 

石田歯科に一歩足を踏み入れると、昭和で時が止まったままの待合室の風景が広がっていた。

 

待合室の椅子では、この階段をどうやって上って来たのか不思議なぐらいにヨボヨボのお婆さんが居眠りをしている。不意に「このお婆さん、もしかして妖怪なんじゃ…不安」と失礼なことを心の中で思ってしまった私である。

 

受付で初診の用紙を貰い、コロが自閉症であることを記入。紹介者を書く欄があったので、しいちゃんの名前を書かせていただいた。

 

暫くして、コロの名前が呼ばれ、親子で中へ。

……当然のことながら、診察室の中もザ・昭和であった。

 

昭和生まれの私ですら、こんな古い歯科の診察室を見たことがない。

診察室の奥にある、扉が半開きになっているレントゲン室は、中に入ったら「あなたの知らない世界」に引きずり込まれそうな雰囲気だ。

 

当然ながら、コロは「うわぁぁぁぁ、怖い!!怖いよう!!えーん」と言いながらその場で固まっている。

 


そこに現れたのは、「あれ?”夢グループ”のお二人ですか?」と見紛うばかりのオジサン先生と女性の歯科衛生士さんだ。

 
 
【参考写真】

※「通販とコンサートの夢グループ」公式HPより拝借(yume-gr.jp)

 

 

もはや、お二人が夢グループの石田社長と保科さんにしか見えないので、このブログでは石田先生と歯科衛生士の保科さんと呼ぶことにする。(※当然仮名)

 

石田先生は、怖がるコロに満面の笑みで「こんにちは!コロくん!先生はねぇ、しいちゃんのお友だちなんだよウインク」と声をかけて下さった。

 

泣きながら顔を上げるコロ。

私もすかさず、「へぇ!!先生、しいちゃんのお友だちなんだって!!良かったねぇひらめき」と大げさに喜んでみた。

 

石田先生は「じゃあコロくん、このお椅子に座ってみようか!」と言ってくれたが、コロは「嫌だ!!怖い!!」の一点張り。

 

石田先生は嫌な顔を一つせずに、何と!!「じゃあ、まず先生が座ってみるね!」と診察台に腰をかけてくださったのだ。そのお姿は、ごくごく普通の椅子に自然と座っている感じ。

 

私が感動していると、石田先生は「じゃあコロくん、隣に座ってみようか!」と診察台をポンポンと叩いている。

 

何と!!コロは涙を手で拭きながら、石田先生の隣に座ったのだ!!ポーン

 

……石田先生スゲェ!!百戦錬磨!!

 

石田先生は立ち上がり、「さ、コロくん、そこにスリッパ脱いで足を延ばしてごらん!そうだ!!凄いぞ!!できるじゃない!!お兄ちゃんだねぇ!!」と褒めまくり。キラキラ

 


そこで、歯科衛生士の保科さんにバトンタッチ。

 

石田先生は平然と隣の診察台に座っていたお婆ちゃん(待合室にいた人とは違う方)の治療を始めている。

 


保科さんは診察台を倒さずに、コロの口の中を見てくれた。

「ぎゃぁぁぁ!!怖い!!怖いよう!!」と絶叫するコロに、「怖くないよ~。痛かったらすぐに言ってね。すぐにやめるから。そうだ、しいちゃんはねぇ、ニコニコ笑顔でお歌も歌ってくれるんだよ~ウインク」とコロを優しく励ましてくれた。

 

保科さんは「まずは汚れを落とさないと虫歯があるか見れないからね~」と言いながら、軽いタッチでコロの前歯の汚れを歯ブラシで落としていってくれた。

 

絶対に痛くないくせにコロは「ぎゃぁぁぁ、怖いぃぃぃ!!」と絶叫し続けている。

 


隣の診察台のお婆ちゃんがさぞ不快な思いをされていると思い、目が合った時に「うるさくして、本当に申し訳ありませんショボーンあせる」と謝罪したら、お婆ちゃんはとんでもない!という顔をしながら、「大丈夫よぉ!ウチにも孫がいるから分かるわよ~ニコニコ」と笑顔で言ってくれ、すっかり恐縮千万であった。

 

石田歯科、患者さんまで優しくて……有難すぎるではないか。泣くうさぎ

 


保科さんがあれよあれよという間に、コロの積年のプラークを綺麗にしてくれ、「ほら!ここから自動でお水が出てくるんだよ~。ブクブクできるかなぁ?」とコロの興味を引きながら、見事!!うがいも成功させてくださった。拍手

 

また石田先生が登場。

 

診察台を倒したら、コロが「ぎゃあああ怖い!」と絶叫。歯を照らすためのライトを付けたら「ぎゃあああ眩しいぃぃぃ!!」とまた絶叫。コロは両手で顔を覆ってしまった。

 

石田先生は「そうかぁ、怖いかぁ。じゃあねえ、片方の手は覆ったままでいいや!もう片方の手は膝にのせておいてくれる?」と、コロを一切叱らずに、診察できる体勢に持って行ってくれた。

 

石田先生はコロの歯を丹念に調べ、私に「お母さん、虫歯、なさそうだよ!!暗い所が虫歯に見えただけかも!でもね、歯石がいっぱいだからね、しばらく通わないとだね。」と言ってくださった。

 

虫歯がない……もしかしたら、コロを安心させる手段かもなぁと思いつつ、先生を信頼して「コロちゃん、よかったね、虫歯ないって!!」と声をかけたら、コロは心底安心した顔で「そっかぁにやり」と嬉しそうだ。

 

石田先生から、「お母さん、なるべく仕上げ磨きをしてあげてね。全部やると嫌になっちゃうから、最初は前歯だけでいいからね。」とアドバイスを頂いた。

 


最後にコロは石田先生から「じゃあコロくん、またね!!お母さんに仕上げ磨きをしてもらうんだよ!歯磨き、頑張るんだよ!!約束だよ!!」というお言葉をもらっていた。

 

 

高架橋とほぼ同じ高さの石田歯科のビルの窓から、電車がよく見えるのもコロは気に入ったようで、「先生、優しかったゲラゲラ」と、すっかりご機嫌。

ご褒美にマックのハッピーセットを買ってやったら、さっきの絶叫が嘘のように、満面の笑みでモリモリチーズバーガーを頬張っていた。

 


しかも!!夜には、コロが仕上げ磨きをさせてくれるという嬉しいおまけまで付いてくるだなんて、奇跡としか言いようがない。拍手

 

コロの歯をチェックしたら、保科さんが歯ブラシだけで汚れを落としたとは思えないぐらいに歯がピカピカで、更にビックリ仰天だ。



凄い、凄いぞ!石田歯科!!泣き笑い

 

ホームページが存在しない、昭和ノスタルジー石田歯科、しいちゃんのママさんが教えてくれなかったら絶対に辿り着いていなかったと思う。

 


翌日、しいちゃんのママさんに、紹介者の欄にしいちゃんの名前を書いたことが事後報告になってしまった謝罪と、凄く優しい先生と歯科衛生士さんだったこと、患者さんも寛容だったこと、しいちゃんがいたからコロが頑張れたことなど、お礼をLINEで送った。

 

 

しいちゃんのママさんから「しいがお役に立ててうれしいですラブラブ石田歯科、先生も患者さんも優しいですよね!」という旨の返信をいただき、「こちらこそ、ありがとうございます!」というスタンプまで押してくださっていた。

 

 

マイノリティーに不寛容な言葉が飛び交う社会だと思っていたけれど、こんな優しい世界があるなんて、良い意味で「あなたの知らない世界」に行ったみたいで、感動的な出来事だった。